四半世紀前に創業したDeNAは現在、第2の創業と位置づけ、AIにオールインすることを宣言、AIを軸にしたさまざまな戦略を進める中、安心・安全なAI活用を支えるべく、データガバナンスに取り組んでいる。
JR西日本の鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部は、鉄道部門内におけるDXを推進し、鉄道オペレーションにおける業務変革・課題解決を実施する組織。JR西日本グループ全体のDXを推進するコーポレート部門のデジタルソリューション本部と情報連携、相互協力することで、西日本エリアの活性化に貢献するとともに、業務変革を推進し、持続的な経営へと転換することを目指している。今回取材した鉄道DX部は、デジタル技術を活用して業務変革するとともに、鉄道システム全体を最適化する重要な役割を担う。
鉄道DXに限らず、あらゆるDX推進に必要不可欠なのが「データの民主化」だ。そのためにはMDM(マスタデータマネジメント)が重要になってくる。データの民主化に向けた取り組みの1つであるMDMの整備と将来構想について、鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 DX企画・DX基盤の三輪田康志氏、鉄道本部 イノベーション本部 鉄道DX部 DX基盤の茨木美玖氏、新沢太地氏、および鉄道本部 施設部 機械課 出改札の藤村勇斗氏の4人に、ITmediaエグゼクティブ プロデューサーの浅井英二が話を聞いた。
現在の鉄道業界は、労働集約型産業といわれており、人に依存しなければ成り立たない業務がたくさんある。さらに、人口減少、少子高齢化が進み、これまでのように顧客の利用が右肩上がりを続けることも、働き手を確保することも困難になってきているのが実情といえる。
「取り巻く環境が厳しさを増す中、鉄道インフラをいかに維持していくかが大きな課題になっています。そこでJR西日本では、JR西日本グループデジタル戦略を策定し、デジタル技術と豊富なデータを駆使することで、新たな価値の創造と活性化に寄与する鉄道DXの実現を掲げました」と三輪田氏は話す。
鉄道DXでは、デジタル技術とデータを利活用することで、環境の変化に迅速に対応し、鉄道事業を将来にわたり運営し続けることを目指している。
「鉄道本部の最大の使命は、鉄道を動かし続けることで、デジタル戦略の軸となるのは、鉄道システム、顧客体験、従業員体験の3つの再構築です。そのためには、データを利活用した鉄道DXを推進することが不可欠で、持続的な経営へと転換することが重要です。データの利活用、および鉄道DX推進のベースにあるのは、“機械ができることは機械に任せ、人は人がすべき業務に集中する”という考え方です」(三輪田氏)
デジタル変革の推進には、データの民主化が不可欠となるが、JR西日本ではデータの利活用に向けいくつかの課題を抱えていた。
現在は施設部 機械課へ異動となっているが、鉄道DX部でマスターデータマネジメント(MDM)に取り組んできた藤村氏は「データ民主化への課題としては、低いデータ信頼性、データに関する解釈のバラツキ、勘と経験と度胸のカルチャーなどがありました。JR西日本では約500もの業務システムを利用しているが、ほとんどのシステムがレガシー化しており、それぞれにデータが格納されていて、データをクラウドのデータ基盤にアップロードすることも難しい状況でした。また鉄道のオペレーションに関しても、Excelや紙ベースなど、昔ながらのアナログな方法もあり、こうした課題を解決するために、デジタル化が急務となっていました」と話す。
レガシー化した業務システムをモダナイズし、データを活用しやすい仕組みにしていくためには、まずは業務システム統合に向けたデータ基盤の構築が必要だった。その一環として、MDM整備のプロジェクトがスタートした。
MDMの整備に取り組んだのは、鉄道システムをスリムでシンプルなシステムに再設計することを目指していたが、マスタデータが統一されていない、部門間でのマスタデータの範囲や粒度が異なっているなど、システム間のデータ連携の課題が背景にある。また、部門横断的にデータを利活用したいという現場担当者の要望が多くあったが、マスタデータが統一されていないために、部門横断的なデータの利活用が困難だったこともMDMの整備に着手した背景の1つだった。
「約500のシステムのほとんどが個別にマスタを構築しており、同じ意味を表すマスタでもコードや範囲、粒度が異なっていました。そのため必要なデータや最新のデータがどこにあるのか分からず、データの検索に時間と労力がかかっていました。それぞれの業務には歴史があり、駅や路線、線区などのマスタデータも部門ごとに最適化され、人や部門によって解釈にバラツキがあることも課題でした。さらに、安全性を最優先にしつつも規格化・標準化が難しい鉄道固有の文化もMDM整備を困難にしていました」(藤村氏)。
MDM整備の進め方としては、まずは駅マスタ、路線・線区マスタ、社員マスタ、キロ程マスタ、組織マスタ、設備マスタの6つのマスタデータにスコープを絞った取り組みを実施。共通認識の形成、ビジネス課題の整理、方針の策定という3つの柱により、関係者間での共通理解や合意形成を実現し、マスタデータに対するガバナンスを効かせることを目指している。
藤村氏は、「部門ごとに認識の違う部分は、コミュニケーションしながら共通認識を作ることでマスタを統一するという地道な作業を続けています」と話す。
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