下水道管点検に新技術 ドローンで壁にpH指示薬塗り調査 八潮陥没類似事故防止に有用
下水道管点検に、小型ドローンで水素イオン指数(pH)指示薬を壁面に塗って劣化度合いを調べる新技術が開発された。埼玉県八潮市で令和7年1月、下水道管の上の道路が陥没する事故では、事故以前の点検で壁面劣化が発見できなかった。この新技術が実用化されれば、硫化水素濃度が高く流れが速いなど人間が入って調査できない下水道管の点検が可能となり、専門家は八潮陥没事故と類似の事故防止に役立つとの見方を示した。
薬をローラーや噴射で塗布
この技術は、低炭素型高機能コンクリート開発でしられる下水道管メーカー、日本ヒューム(東京都港区)、狭小空間向けドローン開発に高い技術を持つリベラウェア(千葉市中央区)、下水道マネジメントに詳しく埼玉県の八潮復旧工法検討委員会委員長である森田弘昭・日本大生産工学部教授(土木環境システム)が、共同研究して開発した。
日本ヒュームによると、リベラウェアが開発した、20センチ四方のドローン「IBIS2」に、広範囲のpHが色合いでわかる「万能pH指示薬」を下水道管壁面にローラーで塗ったり噴霧したりする装置を搭載し、暗所に強いカメラで撮影しパソコンに送る。コンクリートは、健全な状態であればアルカリ性の青色、劣化が進めば中性の黄色、さらに酸性の赤色に変化することを利用し、壁面状況の色の違いを可視化することで劣化状況を定量的に把握することが可能となる。
人が入れない場所に対応
埼玉県の道路陥没事故に関する原因究明委員会の報告書によると、県は下水道管点検を調査会社に委託し5年に1回に実施していた。令和3年の点検で、八潮市の道路陥没箇所となった地点の下水道管の中は流速が早く流入を止めることができないため下水道管に人が入って目視できなかった。
当時はドローンによる点検が普及していなかったため、カメラを搭載した浮体を流す方法で実施したが、水しぶきや流れの影響で、流速から判断して陥没直下の地点の映像ができなかったと報告書は示した。
ドローンによる下水道管点検はその後普及していくが、管内を飛行して得たカメラ映像を人が目視確認する方法が主流で、劣化度合いが数値化できないことが課題となっていた。
劣化範囲の確定に有用
日本ヒュームの熊谷工場(埼玉県熊谷市)で6月に行われた公開実験と会見で同社の増渕智之社長は「下水道点検は以前からしていたが、半年ぐらい前にリベラウェアさんと出会い、ドローンを使って何かできないかと共同研究を提案した」と経緯を明かした。
同技術のメリットについて会見で説明した森田弘昭・日本大生産工学部教授は「八潮市の陥没した下水道管のように、人が入って調査できない場所に入ることができることに加え、指示薬を使うことで劣化がどの範囲かを確定することにより、本格的調査や事前に対策を取れる」と類似事故防止に有用だとした。
全国の自治体の下水道管調査に今後、この技術が取り入れられていくかどうかについて日本ヒュームの技術開発担当者は「千葉市と、この技術の活用に向けて検討しており、そこで1年ぐらいの試行を経た結果をみて、各所への適用につなげていきたい」との見通しを示した。(昌林龍一)
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