景気は後退? それとも一時的な踊り場? 実質GDPはプラスの可能性も:景気探検(2/2 ページ)
2月末に発表された1月分の鉱工業生産指数・速報値は前月比2.0%減と2カ月ぶりの減少になった。生産のピークが07年10月分とみて、そこを景気の山とする景気後退説が出てくる可能性がある。
しかし、身近な2月の数字はしっかりしている。08年2月24日までのJRA(日本中央競馬会)の年初からの累積売上げは前年比3.2%増で、年間売上げ11年ぶりのプラスに向けて順調な動きとなっている。さっぽろ雪まつりの観客数は215.9万人で前年比2.8%増となった。観光・レジャー関連の動きは良い。
強い女性が主人公の連続ドラマがヒットすると景気が悪いことが多いが、1月クールのドラマは全体として不調で、2月までで視聴率が20%を超えたのは「薔薇のない花屋」の第1回目だけだった。強い女性が主人公の話題作「交渉人」や「斉藤さん」も2月半ばには13%前後の視聴率といまいちだった。強い女性が主人公の連続ドラマのヒットが気掛かりな局面にはならなかった。
実質GDPはプラスか
1〜3月期の生産は前期比マイナスだが、実質GDPはプラスの可能性が高そうだ。
まだ、2月末段階の暫定予測だが、5月中旬発表の1〜3月期実質GDPを考察してみよう。
住宅投資は10〜12月期に建築基準法改正の影響で前期比0.3%のマイナス寄与となった。1〜3月期では最悪0.1%程度のマイナスにとどまろう。
他でマイナス要因になるのは設備投資だろう。これは10〜12月期の前期比が高かった反動である。設備投資の関連データである資本財出荷指数の1月分の対10〜12月平均比は、1.9%減となった。なお、建設財は建築基準法改正の影響などが薄れたので、同0.0%の横這いになった。
個人消費はしっかりだ。個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1月分の対10〜12月平均比は3.1%増となった。非耐久消費財出荷指数は同0.3%増と若干のプラスの伸びだ。一方、需要サイドでは、家計調査の実質消費支出(除く住居等)家計調査の実質消費支出(除く住居等)の10〜12月期の前期比は0.6%増だ。乗用車販売台数の1月分の対10〜12月平均比は5.4%増である。総合的に考えると1〜3月期の個人消費の前期比は1月分のデータからみると、そこそこしっかりしたプラスの伸びになりそうだ。
実質輸出入の動向をみると1月分の対10〜12月平均比は輸出が5.2%増、輸入が1.2%増であり、1〜3月期のモノの外需はそれなりのプラス寄与になりそうな状況だ。
たくもり・あきよし
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 悪いのは本当にサブプライム問題か?――景況感悪化の別の理由
サブプライムローン問題の全貌がなかなか分からず、暗雲が世界中を覆っているが、日本の株価が大きく下落している要因には幾つかの理由がある。 - 暗いニュースに沈む消費者心理――明るいのは子年のジンクスだけ?
1951年以降の日経平均株価・前年末比を調べてみると十二支の中では平均上昇率が一番高いのは子年の40.3%であり、昨年までの57年間の平均12.4%を大きく上回る。 - 米大統領選挙、夏季オリンピック開催年のジンクスとは?――二分される世界経済・日本経済の読み方
2008年の景気の見方は悲観論と楽観論とに二分されている。景況感の悪化が昨年に引き続き今年も進み、それが経済の実体面にも大きく影響すると考える人にとって、2008年は景気腰折れの年と予想されるのだろう。 - 「不運」の連鎖は大相撲にも――懸賞本数の伸び悩みに見る消費者心理
景気の判断材料には明るい話題もあったが、11月は結果的に話の腰を折られることが多かった。大相撲でも人気力士の休場により多数の懸賞が消えた。 - 市場の混乱あるも足元景気は拡大か? その傾向はドラマ「働きマン」にも
サブプライムローン問題による金融資本市場の混乱や建築基準法改正の影響などはあるが、足元回復の動きをみせる明るい動きもある。 - 景気拡張は過去最長へ、プロ野球人気球団の好調も下支えに?!
景気はもたつき局面を緩やかな拡大を続けている。景気拡張期間は67カ月となり、日清戦争好況の64カ月の最長記録を抜いて新記録を更新している。 - サブプライム問題を乗り越え、欽ちゃん走りが先行きを明るく?
米サブプライムローン問題による懸念から、消費者マインドの先行きが気になるところだが、身近な社会現象からは先行きの持ち直しの兆しもうかがわれる。 - ヤンキース奇跡の大逆転が日本の景気を左右する!?
- ラニーニャ発生で消費はどうなる?――天候と景気の不思議な相関関係
- 日銀の第3次利上げ時期を占う――選挙と金融政策の関係
- ホームレスの実態から見る景気の回復具合は?
- 「ハケンの品格」で占う――強い女性ドラマがヒットすると景気は?