「ビジネスへの貢献こそがCIOの責務」――日産の行徳CIO(2/2 ページ)
情シス部門をワールドクラスにすることを目指す日産は、グローバルでの開発を拡大しながらも業務プロセスの標準化を強力に推し進めていく。
金は使うが成果はない
BESTのキーワードは「標準化」だ。2005年以前は高カスタマイズなITシステムが構築されていたが、BESTによってあらゆる拠点の業務プロセスを標準化する。行徳氏は「これまでのITシステムは、お金を使う割りに成果がない、何をやっているか可視化されていないと言われていた」と振り返った。そこでまずは、ばらばらだったシステムをマッピングし直し、全体を把握することから始めたという。
そうした過程の中でとったアプローチの1つがSOA(サービス指向アーキテクチャ)である。同社のサービス化のアプローチは「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つで、前者は変動の激しいプロセスや再利用性の高いプロセスを持つ販売、マーケティング領域が対象となる。後者は「20〜30年経っても変わらない」(行徳氏)という生産部門やサプライチェーン領域が対象になる。メインフレームをプロセスに合わせてモジュール化しSOAを進める。これにより、新たな工場にシステムを導入する際の時間が大幅に短縮できる。
「これまではシステム導入に1年以上かかっていた。しかし、モジュール化することで事業規模に合わせたシステム構築が可能なため、現在は約9カ月で完了する。今後は6カ月を目指す」(行徳氏)
拡大するオフショア
オフショア開発もBEST戦略を推し進める上で原動力となる。同社はシステム運用やヘルプデスクといった領域ごとにベンダーを選択するほか、パートナー契約期間も長期(10年)から短・中期にシフトしてきている。
オフショア拠点は、ルノーと共同のインド開発センターをはじめ、中国、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、スペインなど多くの地域に拡大している。「現在では開発コストの約30%をオフショアに割り当てている」と、行徳氏はグローバルでの開発の広がりを強調した。
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