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【第14回】疲弊するIT部門(7)〜ITリテラシーを高める3つのスキル三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/2 ページ)

わたしが10年間携わった新人研修で得た答えは、IT専門知識よりも、まず人として物事の善しあしが見抜ける力を養えということだった。おかしいものを「おかしい」と言える人を育てる。ITスキルだけでは、ユーザーを満足させる未来のシステムはつくれないのだ。

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温室育ちから脱するべき

 しかし、この手順に従って新人にスキル研修をしていては、現場で活躍できるまで何年かかるか分からない。集合研修はしょせん温室栽培である。温室栽培は、理屈ばかりで頭でっかちの人間しか育たない。温室では、基本中の基本しか教えない。現場に出て臨機応変に対応しながら業務やシステムの本来あるべき姿を自分なりに見い出していく。50人の新人のうち1割の人間がその本質を見つけ、次世代のリーダーに育っていけば組織は活性化することだろう。

 そういう思いで新人教育を変えていった。だから、わたしの研修に参加した新人は、なぜこんなことをやらなければならないのか疑問に思い苦労したことだろう。しかし、バブル期入社の新人が既に中核社員になり現在活躍している。少なからずわたしの研修が役に立っているはずだ。

未来を提案できる人材

 わたしの考える人材育成は、自分で育つ力を身に付ける上での気付きを与えるものである。特にIT人材の育成は、ITをツールとしていかに会社がもうかる仕組みをサービスするかを考えることのできる人材を育成することである。

 会社がもうかるための仕掛けに使う道具としてITはどうあるべきか。未来に向けてITで何ができるかを具体的に提案できる人材を育てることが、これからの必要とされるIT人材ではないだろうか。しかし、システムの完成度にこだわりを持てるだけの専門知識がなければ、きれいごとだけで説得力のないSEになってしまう。昔のSEは要件を受けてシステム構築できれば一人前であった。今必要とされるSEは、さらに業務の最適化が提案でき、日々変化する現場に定着するシステムを実装できる人材である。

 私見だが、人材育成は子育てと非常に似ていると思う。わたしが入社した1980年ごろは、プログラミング研修以外は特になかったがそれなりに育った。なぜなら、教えられるのではなく先輩の仕事の仕方をまねたり、盗んだりして試行錯誤を繰り返し、自分なりに効率的で正確な仕事の段取りを覚えてきたからだ。徒弟制度、でっち奉公という言葉がぴったりで、時間はかかるが人材育成には良い方法だといえた。先輩全員が見習える人ばかりではないかもしれないが、反面教師もまた自分の糧になる。

 子供は親の背中を見て育つ。日常の親の態度や言動が子育てそのものである。言葉で伝えても言うことを聞かないのは、親自身の責任である。子供は親をよく見ている。自分を律する親の言うことは良く効くのだ。

 より良いIT人材を育成するには、上司や先輩が若手の手本となるような魅力ある人間になることが、何よりも効果が高いのではないだろうか。

(編集部より:次回からは「ITシステムのあるべき姿」をテーマに議論を深めていきます。ご期待ください)

プロフィール

岡政次(おか まさじ)

ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 協創企画推進室

三重県出身1959年生まれ。1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。2007年4月、ウイングアークテクノロジーズ株式会社に入社。現在、経営・エンドユーザー・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進する。


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