産学官連携によるIT人材育成で国際競争に打ち勝て(2/2 ページ)
人材不足に悩む日本のIT産業が危機を脱する方法は何か。「将来のITトップ候補生」を目指し、経団連を中心に産学官連携による人材育成が進められている。その成果はいかに……?
即戦力ではなく将来のリーダー
筑波大学で新コースの立ち上げに携わった田中氏は振り返る。「大学教育は教授の研究テーマが優先になっており、特に修士課程ではコースワークが不十分だった。そこで修了に必要な単位数を30単位から50単位以上に引き上げたほか、ロジカルシンキングやコミュニケーションなどコンピテンシースキルを重視したカリキュラムを導入した」。新コースはスタートからわずか1年しか経っていないが「当コースの学生は実務経験2年に匹敵するスキルを持っていると企業人事も評価する」(田中氏)という。
産学官による高度ICT人材の育成に向けた取り組みは、最初の段階であったモデルコースの立ち上げと当座の運営にはめどが付き、今後は現在の取り組みを安定的かつ持続的な体制で運営し、全国に普及させていくことが急がれる。そのためには、産学官が個々に活動するのではなく、予算、カリキュラム、人材などの資源を一カ所に集約し、国家戦略として横断的な組織の構築が必要だという。そこで浮き上がった構想が「ナショナルセンター」である。
ナショナルセンターでは「実践的ICT教育に関する研究」「モデルカリキュラムの策定」「全国の大学と支援企業のコーディネーション」「教育アセットの展開」「ファカルティ・ディベロップメント(FD)機能」「融合型専門職大学院の開設」という取り組みを行っていく。
大力氏は「ICT人材育成に関して、このように業界を横断した形での取り組みはなかった。期待も責任も大きい。即戦力というよりも将来トップに立つような人材を育てたい」と強調した。
産学官連携に期待することとして、今井氏は「東京大学ではCIO(最高情報責任者)やCISO(最高情報セキュリティ責任者)といった産業界で活躍できる人材を育成したいと考えている。そのためにも人材交流を盛んにし、企業の技術者と学生が直接話す機会を増やしてもらいたい」と述べた。
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