「普通社員をスターにする取り組みを」――ベリングポイントの人事コンサルタント
終身雇用、年功序列、職能主義……、日本企業の古きよき時代は終わり、市場競争に生き残るために組織や制度の改革に取り組む企業は多い。こうした状況だからこそ「普通社員」の果たす役割は大きいという。
コンサルティング大手のベリングポイントは11月26日、プレス向けに人材マネジメントに関するセミナーを開催した。日本企業が強い組織をつくり上げるためには「(企業おいて大多数を占める)普通社員のやる気を引き出し、彼らが実感できるような現場マネジメントの改革を実行すべきだ」と組織・人事戦略チームの三城雄児マネジャーは強調した。
普通社員とは、能力が平凡なレベルということではなく、企業の中での評価が中間的な社員を指す。欧米ではBクラス社員(B Class Employee)と呼ばれており、忠誠心が高く長期にわたり組織を支える役割を担っている。
三城氏によると、従来の日本企業の強みは普通社員のパフォーマンスの高さであり、それが企業競争力の源泉になっていたという。企業の人材マネジメントも年功序列や職能主義を重視し、終身雇用を前提とした人材育成を行っていた。ところが、市場のグローバル化や景気後退などによるビジネス環境の変化に伴い、人材の流動性が高まったほか、多くの企業では成果主義が採用されるようになった。「これが日本企業の組織全体のバランスを崩し、普通社員が軽視される状況をつくり出した」と三城氏は話す。
普通社員を核にした人材マネジメント
人件費などの問題から従来型の制度に戻すのは不可能という。三城氏は普通社員の強みに注目した日本独自の人材マネジメントが必要だと説く。具体的には、企業理念や経営ビジョンを全社員に徹底的に浸透させるほか、企業のコアバリューについては普通社員に検討させて当事者意識を持たせる。これにより、現場の声を組織に反映させるような仕組みをつくることも可能だという。
三城氏はある企業での実例を紹介した。同社ではコアバリューを構築するためのプロジェクトに多数の普通社員を参加させて、目的の重要性や仕事の進め方などをトレーニングした後、いくつかのチームに分けて成果を競わせた。中間報告では、すべてのチームに「ダメ出し」をしてわざと混乱状態をつくり出した。これにより、やらされ感でプロジェクトに参加していた社員の自律を促すことができ、会社のコアバリューを自ら考える普通社員を増やすことに成功したという。
「コアバリューは通常なら上層の社員(Aクラス社員)が議論して構築するが、それでは経営者を意識したきれいな理念しか出てこない。現場にいる普通社員を参画させることで本音を引き出すことが可能である」(三城氏)
普通社員のキャリアモデルを広く示すことも重要だ。多くの企業ではAクラス社員を想定したキャリアモデルや人材育成プログラム(CDP)を打ち出しているが、普通社員から共感を得るには同じ普通社員を登場させキャリアを語らせなくてはならないという。三城氏は「普通社員をスターに仕立て上げ注目されるように、人事部門が主体となって取り組むべきだ」と力を込めた。
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