数字と正直に向き合う姿勢が経営者には必要:ITmediaエグゼクティブ セミナーレポート(2/2 ページ)
企業経営において重要なのはカネの流れ、すなわちキャッシュフローであり、経営者には数字を直視する姿勢が求められるという。富士通の経理部門で30年のキャリアを積んだベテランはこう語る。
いつでも連結、どこでも連結
取引明細データベース化は、具体的にどのような効果をもたらすのか。俵氏は事例を通じて紹介した。富士通では、仕訳集約された会計情報が経営の意思決定に使えないことを課題として、グループ全体での管理会計と財務会計の一致を目指して会計システムを刷新し、最小単位の明細で情報を持つことで計画と実績の明確な対比を可能にした。これが大手企業向け統合会計ソリューション「GLOVIA/SUMMIT」である。
「当時、当社ではグループレベルで業務とモノと金と会計情報を一致させること、日次決算を実現することの2つがリアルタイムでの意思決定に必要とされた。そこで、明細レベルで積み上げたデータを持つことで、各フィールド、各プロダクトに売上高や原価など、それぞれの単位で切り出せるマトリックス経営を可能にした。さらに、グループの経営情報を統合することで、制度面での連結や事業セグメントごとの連結に加えて、グループ内の子会社や事業部門を結合したらどうなるかというシミュレーションも可能になった。『いつでも連結、どこでも連結』というわけだ」(俵氏)
取引明細データベース化で経営課題を解決
顧客の事例も紹介した。GLOVIA/SUMMITを2000年に導入した製造業H社では、現預金残高を大きく圧縮することに成功した。導入から3年間で約3割、6年間で約2割にまで減少したという。
「非常に精度・確度の高いキャッシュフロー管理を実現し、バッファーとしての現金を持つ必要がなくなったため、現預金残高を減らせるようになった。取引明細をきちんと持つことが鍵となっている」(俵氏)
グローバルにグループを展開するある企業では、海外子会社のコントロール、グループ連結経営、案件別の粗利管理、間接業務の効率化という4つの課題を、GLOVIA/SUMMITの採用で解決した。この顧客は、「個々の取引を明細情報として把握して分析できなければ意味がない」と語っているという。
さらに別の企業では、自社構築の会計システム「管理会計Web」に、GLOVIA/SUMMITに使われているデータウェアハウスFDWH(Financial DataWareHouse)を採用、「見える経営」を実現し、グループ組織再編に役立てているという。
俵氏は、「FDWHに蓄積されたデータを、組織別・製品別・得意先別といった切り口で見ることができ、経営トップや現場のマネジャーがスピーディーな意思決定を行う上で、大きな効果が見込める」、「FDWHで明細データをすべて保持しているので、いちいち業務部門に問い合わせる必要がない。問題が解決するまでの時間は飛躍的に短くなる」といったユーザーのコメントを紹介した。
会計処理の全明細を保管し、迅速かつ柔軟な分析が可能なシステムは、さらに将来的な広がりも期待されている。俵氏は最後に、富士通が取り組み始めている構想について触れた。
「現場のオペレーションには、本当は指示を表す情報の流れがある。個々の業務行為の結果をきちんと蓄積しておけば、その連鎖を復元してとらえることが可能になる。その際、事実だけを正しく処理するような仕組みを作り、全取引の明細データ整合性の検証を行うことで、不正やエラーなどを防ぐほか、内部統制評価の支援にもつながるはずだ」(俵氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 2010年から適用される新会計基準、経営レベルの対応が不可欠
今年3月に企業会計基準委員会が公表した新会計基準は、2010年4月から適用が始まる運びとなった。現行の会計基準と何が異なるのか? 取り組みに向けて企業が留意すべき点とは? 有識者が解説する。 - 中国ビジネス最前線:国際市場、中国の会計基準を評価
EUが評価したことにより、国際資本市場が初めて中国の会計基準を受け入れることになった。 - データ提出を受けた後3日間が勝負――グローバル企業の連結決算
グローバル企業の会計処理は想像以上のスピードが要求される。ただし限られた数のスタッフでスケジュール通りに、正確に行うには、一定の「余裕」を生んでくれるツールが不可欠だ。 - 早稲田大学、ベリングポイントと会計人育成のための講座を開設
早稲田大学はコンサルティング大手のベリングポイントと共同で、コンサルティング実務をテーマとした寄附講座を開講する。 - 失敗プロジェクトを繰り返すな、日本企業にも意識の高まり
度重なるプロジェクトの失敗に頭を悩ます企業は多い。現状はあまりにも属人的になり過ぎているため、ITを活用してプロセスの標準化を図りプロジェクトを円滑にすることが必要だという。 - 荒川区が新公会計制度に対応した財務システムを採用
- セブン銀行、新会計システムでATMの損益把握 5億件のデータを分析