【第4回】グローバル化の進む欧米企業:日本流「チーム型マネジメント」
説明が難しい高コンテキスト経営の日本企業と比べ、欧米企業は明快な戦略や文化を持つため、容易に経営のグローバル化が行えるという。
一歩進んだ欧米企業のグローバル化
前回説明した経営グローバル化のステップに、日本企業群と欧米企業群の進ちょく度合いを俯瞰する。高い海外売り上げ比率を持つことがグローバル化ではなく、グローバルマネジメントがどれだけ共通化されているかで測定する。マネジメントが共通化されていればグローバル化ステップにある企業と位置付ける。グローバルに事業を展開しながら、自国出身の人材のみを幹部候補として扱うことや、買収後に別会社としてマネジメントを分ける事例もある。これらは経営グローバル化ステップには含めない。
欧米企業は比較的スムーズに経営グローバル化を進めている。これは欧米企業特有のコンテキストに依存しない、明快な戦略や文化を持つことが影響している。個人を主体とし、詳細に定義された職務内容はほかの文化圏でも理解される。例えばIBMでは、明快な価値観とともに詳細な業務ルールや守るべき行動規範が存在し、グローバルで共有されている。
日本企業はチームを主体とした全員参加型の経営スタイルを持ち、説明しにくい高コンテキスト経営である。多くの日本企業では明快な職務内容で個人を統制するよりも、現場の人材に権限を委譲し創意工夫を促すことを重視する。個人型マネジメントになじんだ外国人は、日本的な参加型意思決定を理解できない。そこで論旨一貫性あるチーム型マネジメントを構築し、外国人に説明し信頼を勝ち取ることが重要となる。
グローバルマネジメントにおいては、どんなに優れたコンセプトでも言語において説明され体系化されなければ理解されず、行動に移すこともできない。改善(Improvement)や品質管理(TQM)などのオペレーションコンセプトは日本で始まったが、米国で体系化され世界に広められた。同様にチーム型マネジメントのコンセプトも、いかにして体系化し世界規模で導入できるかに日本企業のグローバルマネジメントの成否がかかっている。
日本企業の経営グローバル化の遅れとは、日本企業や日本人の特有の課題でもある。自社や自身のマネジメントをひも解き明快に定義し、外国人を説得しリードしていく地道な努力が必要である。
次回はグローバルマネジメントの一要素である、グローバルな組織文化について述べる。
著者プロフィール
岩下仁(いわした ひとし)
バリューアソシエイツインク Value Associates Inc代表。戦略と人のグローバル化を支援する経営コンサルティングファーム。代表は、スペインIE Business School MBA取得、トリリンガルなビジネスコンサルタント。過去に大手コンサルティング会社勤務し戦略・業務案件に従事。専門領域は、海外マネジメント全般(異文化・組織コミュニケーション、組織改革、人材育成)とマーケティング全般(グローバル事業・マーケティング戦略立案、事業監査、企業価値評価、市場競合調査分析)。
現在ITmedia オルタナティブブログで“グローバルインサイト”を執筆中。
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