衆議院解散までの一連の騒動を見て:問われるコーチング力(2/2 ページ)
自民党の内部分裂、衆議院解散の断行など、国を主導すべき政治家たちのドタバタ劇には目を覆うばかりである。企業の将来を担うリーダーは反面教師にすべきだ。
保身のためにあがく政治家たち
次に、自分自身が周囲からどう見られているかを常に意識することである。今回の騒動を見ていて感じたのは、自分の世界から抜け切れていない人が多いということである。リーダーになった瞬間に、公人としての視点を持たなければならない。自分の行動が組織にどのような影響を及ぼすのか、世間にどのように受け止められるのか、その点に配慮が足りない人が多過ぎる。政治家ならば、自分の言動が国民にどのようにとらえられるのか、組織のリーダーならば、自分の言動が組織のメンバーにどのようにとらえられるのか、その点に常に気を配る必要がある。あのような騒動を見て、国民はどう思うだろうか。政治家たちは自分たちの立場を守るために、あがいているようにしか見えなかった。
これを組織に置き換えるならば、組織のトップが自分の保身のためにさまざまな画策をしているのと同じである。そのような上司を見て部下はどう思うだろうか。「浅ましい」の一言である。リーダーはメンバーが自分の言動をどう見ているのか、自分の取った行動が組織にどのような影響を及ぼすのか、この点を意識して欲しい。
何度もお話しているビジョンだが、これは本質から生まれる。最後に、この本質を見抜く力がリーダーには欠かせない。認識してほしいのは、この本質は変わるということである。車を例に取るならば、これまで人々が車に求めていた本質は「移動手段」に加えて「かっこよさ」であり「豪華さ」だった。しかし現在は、「地球環境にやさしいもの」という視点が欠かせなくなっている。
その本質をどうしたらかなえられるのか。そこからビジョンが生まれる。これをリーダーが見誤ると、組織は大きな痛手を被ることになるのである。常に人々が求めているものの本質は何なのかを考え続ける姿勢を、リーダーは身に付ける必要がある。そのためには、自問自答し続け、自分の考えを疑ってかかることである。
「この商材はお客様にとって本当に役に立っているのか?」
「お客様は何を求めているのか?」
そのような視点を身に付けることで、本質を見抜く力が養われ、それに基づいたビジョンを描けるようになるのである。
来月の衆議院選挙がどのような結果になるのか分からない。しかし、これからの日本のために、本質を見抜き明確なビジョンを描いて国民を引っ張り、自分がどう見られているかを常に意識できる人がリーダーになって欲しいと願ってやまない。
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著者プロフィール
細川馨(ほそかわ かおる)
ビジネスコーチ株式会社代表取締役
外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。
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