「ユーザーに喜ばれるシステムをワクワクしながら作る」――積水化学工業・寺嶋氏:エグゼクティブ会員の横顔(2/2 ページ)
情報システムの黎明期から次々と発明される新しい技術に携わってきた積水化学工業の寺嶋氏は、既成の概念にとらわれずシステムの「見える化」に取り組んでいる。企業を変えていくような経験ができるIT業界で楽しみながら仕事をして欲しいという。
積水化学の情報システムに尽力
――現在の業務内容を教えて下さい。
寺嶋 2000年にアイザックから本社に戻り、現在まで「見える化」をコンセプトとして、コーポレート全体のITガバナンスと、基幹系、情報系のインフラを整備、革新してきました。
ITガバナンスについては、NTTデータとのアライアンス契約により、基幹系のセキスイ・システム・センターと住宅系のアイザックをNTTデータ・セキスイ・システムズに統合し、情報子会社の経営強化とITコスト低減に注力しました。ここでは積水化学グループより委託されたシステムの開発や運用、保守を行います。しっかりした開発、運用ができる強い子会社を持つことで積水化学自体も強くなることができると考えています。コーポレートの情報システム部門は主に経営の視点からIT戦略を考える部隊と位置付けました。それぞれの役割を明確にすることで、ITサービスの内容およびコストを透明化できました。
セキュリティに関しても注力しています。グループ会社を含めた2万人に対し、電子社員証情報とパソコン情報の組み合わせによって、ウイルスの撲滅と情報監査を徹底しました。いわゆる人の見える化です。大量のメール配信、大容量のダウンロードなどが発生した場合は、アラームを出して個別に対応しています。
インフラ革新としては、「Smile」と呼ぶ、オープンソースを活用したメールおよびグループウェア統合システムを自社で開発しグループ全体で使用しています。従来、関連会社などではID単位で課金が発生することや、機能が不足しているなどの理由でそれぞれ別のパッケージなどを使用していました。これではグループ全体での情報共有は難しい状態でした。そこで思い切って自社開発に切り替えました。そうすることでパッケージを使用する際に発生する保守費用がなくなり、その余剰分を開発に当てることができます。月に2回ほどレビューする場を設け自分たちが使いたい機能を自分たちで追加していくことができるので、使い勝手が良くなり社員が積極的に活用し、グループ共通の情報基盤として定着しています。
ほかにも、情報システム管理規則を制定し内部統制への対応、老朽化したデータセンターの移転、汎用機からオープンシステムへの移行など、コスト低減やリスク管理のための整備を徹底的に行いました。
今後は、開発、保守についてはNTTデータ・セキスイ・システムズに任せ、積水化学本体では企画、イノベーションなどをより推進するように高度IT人材の育成を行っていきます。
国内はほぼ同一のシステムで統一できたので、これからはグローバルも含めた経営情報の見える化を推進していく予定です。加えて、グループウェアやテレビ会議、モバイル環境など情報系システムの使い方を啓蒙し、効率化のためのワークスタイル革新も行っていきます。
ワクワクしながら仕事をする
――部下のモチベーションの上げ方について心掛けていることは何ですか。
寺嶋 やりたいことを皆で議論し、どういう方向に進むのかを部署として掲げ、目的に向かってまい進できるようにしています。コミュニケーションを含め、情報をしっかり共有した上で、ある意味好きなことをやるようにしています。そのような文化をつくりイノベーションが起こりやすい環境を目指しています。ワクワクして、面白い展開を期待しながら仕事ができるようにしたいですね。前向きなユーザーの意見を積極的に聞き、彼らに喜んでもらえるような仕事の進め方を目指すようにしています。
――日々の情報収集に活用しているものはありますか。
寺嶋 企業研究会や日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)などの集まりには、時間があればできるだけ顔を出して情報収集するように心掛けています。業種が違うシステム部門の方と会うのも面白いです。IT部門は競合関係でも情報収集できますし、ほかの方々からもらう生の情報は興味深いです。
最近読んだお薦めの本:
中谷巌著 『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』
ストレス解消法:
毎日出勤する途中、井の頭公園を30分歩いています。歩きながら考えるといろいろなアイデアが浮かびます。30分は長いと思うでしょうが慣れると苦になりません。運動は習慣にしないと駄目ですね。
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