「ベストセラーを生み出す4つのアプローチ」――日本経済新聞出版社・西林氏:エグゼクティブ会員の横顔(3/3 ページ)
数々のベストセラーを生み出した日本経済新聞出版社の西林氏は、固定観念を打ち破る、価値観をひっくり返すような独創性が必要だという。多くの人に会い、常に新しいことにチャレンジし化学反応を起こし続ける編集者である。
人は勝手に育つもの
――課題に突き当たったときの対処方法はなんですか。
西林 自分がよく知らない、未経験なテーマにあえて取り組むことで視界が広がります。今年は『河原久雄文楽写真集』や「いのちの落語」の樋口強さんのエッセイ集『最近、あなた笑えてますか』を刊行しました。ほとんど経験がない中で、国立劇場などにずいぶん通って落語、能・狂言、舞踊といった古典芸能を幅広く鑑賞しました。文楽の世界においては、50、60歳ははなたれ小僧で、70、80歳でもまだ学ぶべきことがあるのです。
編集者も同じではないでしょうか。わたしは、編集者は天職だと感じています。最近、ITmedia エグゼクティブのセミナーで、大里千春さんの外見力の話を聞き興味を持ちました。このテーマはわたしが一番苦手とするものでしたが、外見を良くするのは自分のためではなく、周りを不快にしないためだという感覚は新鮮でした。これをわたしがテーマとしてきた身体論や自然のリズム、美学と結び付けたりすれば、面白い本ができるのではないかと企画中です。
――部下の育成で心掛けていることはありますか
西林 多くのビジネス書でノウハウを学んでおり、頭でっかちになっていましたので、思うように後継が育たずに悩んだこともありました。実は「育てるというのはおごりで、人は勝手に育つものだ。上司はじゃまをしないことが大切で、育つのを助けることしかできない」と、ようやく実感できるようになってきました。
わたしは何が正しいかが大事であって、たとえ親しい仲でも間違っていたら言わなくてはいけないと思うタイプですが、日本では何が正しいかはさておいて関係を大事にする空気があります。『日本型イノベーションのすすめ』をはじめ日本的経営変革のテーマの本をたくさん出し、その風土の長所・短所を考え、どう改革すべきかを問い続けてきました。今は個の自律を図り、チームの心を1つにして力を最大限に発揮する「チームイノベーション」を模索しています。日本の組織風土では相互に尊敬できるような信頼が土台になると考えています。
最近読んだお薦めの本:
大井玄著 『「痴呆老人」は何を見ているか』
福岡伸一著 『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』
橋本治著 『「わからない」という方法』
ストレス解消法:
合気道、テニス、呼吸法や気功、各種体操、温泉、映画、観劇、読書。合気道は相手に合わせることで自分の動き方が決まるため、自己中心では動けません。人との接し方を考える転機になりました。
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