【第1回】日本企業とダイバーシティ・マネジメント:ダイバーシティの“今”を追う(3/3 ページ)
日本でも最近「ダイバーシティ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかしながら、本質を理解している日本企業はまだまだ少ないようです。何故でしょうか?
企業ブランドとダイバーシティ・マネジメント
多くの日本企業が現在厳しいグローバル競争の渦中で企業活動を行っています。グローバル競争に勝ち残っていくためには、ダイバーシティ・マネジメントは重要であり、日本企業はこれまで以上に企業戦略と密接に結び付けて考えるスタンスにシフトしていく必要があります。取り組みの最終目的は、ダイバーシティ・マネジメントを実現した企業そのものが差別化(Differentiation)された「個」として市場で認知されること、そして個の包含する多様性から生み出される価値に基づいて企業が持続的安定的に成長していくことだと考えられます。
個の包含する多様性を「ブランド」と読み替えると、ダイバーシティ・マネジメントが究極の意味するところは「企業ブランドの維持向上」とほぼ同義であるということが分かります。グローバル競争で勝ち残る上で、企業ブランドをどのように構築していくかは最も重要な戦略項目であり、この意味においても欧米企業と同様もしくはそれを超えるダイバーシティ・マネジメントを実践することが、多くの日本企業にとってこれからのグローバル競争を勝ち抜くための重要な選択肢になるのではないでしょうか。
海外におけるダイバーシティ・マネジメントはどのような状況なのでしょう。日本と米国、欧州では、文化的背景や政労使の関係、教育制度、従業員のキャリア観などさまざまな違いがあり、それがダイバーシティ・マネジメントのモデルの違いを生んでいます。次回は、米国のダイバーシティ・マネジメントのトレンドについて詳しく紹介します。
著者プロフィール
渡邊玲子(わたなべ れいこ)
プライスウォーターハウス クーパース株式会社
P&C HRM シニアマネージャー。2001年5月ユニファイネットワーク(PwC P&Cの前身)株式会社入社以来、内外資系企業を中心とした、幅広い業種において組織・人事戦略に関わるコンサルティングに10年以上携わる。最近では、M&Aにかかわるプレ・ポストディールサポートを一貫して行ない、企業再生ファンドによる企業買収に伴うデューデリジェンス・雇用調整・Day1を見据えた具体的な統合計画を策定、PMIフェーズでは、企業戦略にひもづいた人材マネジメント戦略を立案し、採用から代謝までの人材フローマネジメント設計および人事基幹三制度の制度設計をプロジェクトマネージャーとして推進する。
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