今ほどCFOであることに心躍る時代はない【前編】(2/2 ページ)
先行きの不透明な、かつてない不確実性が増した現在のビジネス環境において、企業の最高財務責任者はいかなる役割を果たすべきなのでしょうか。2回に分けて議論を進めていきます。
相乗効果――効率化と洞察力
一方、際立った能力を兼ね備えた経理財務部門が存在することも分かりました。それが、バリュー・インテグレーターです。調査では、回答企業を次のように4つのタイプに分類しています。
バリュー・インテグレーター:業務効率化が高く、ビジネス洞察力も高い
スコアキーパー:業務効率化・ビジネス洞察力双方に課題が
効率的な報告者:業務効率化が高いが、ビジネス洞察力に課題がある
従来型経営参謀:業務効率化に課題があるが、ビジネス洞察力が高い
業務効率化が高く、ビジネス洞察力も高い「バリュー・インテグレーター」は、業績と強い関連性を持つ以下の2つの能力において卓越しています。
(1)業務効率――経理財務部門全体のプロセスおよびデータの共通度
「業務効率化」軸の定義に使用した基準は、財務実績と調査回答の統計上の相関関係によって決定しました。これには、勘定科目の統一、共通の経理財務プロセス、共通の財務データ定義とガバナンス、企業グループ規模の情報標準に関する企業哲学などが含まれます。企業グループ規模で、勘定科目、プロセス、データに関して標準を導入している割合が50%以上であり、かつ企業グループ規模の情報標準を推奨または義務付けている場合を「効率的」と定義しました。
(2)ビジネス洞察力――最適化、計画、将来に関する洞察を専門的に提供できる、経理財務部門の人材、テクノロジー、および分析能力の成熟度
「ビジネス洞察力」軸の定義に使用した基準は、財務実績と調査回答の統計上の相関関係によって決定しました。これには、業務計画および予測の信頼性、分析能力、経理財務部門内での人材育成の効果、予算プラットフォームの共通化の度合いが含まれます。業務計画および予測の質が高く、経理財務部門内での人材育成が高い効果を上げ、共通の予算プラットフォームを大規模に展開している場合を「優れたビジネス洞察力」と定義しました。
バリュー・インテグレーターは、経理財務部門が抱える課題において、ほかのグループよりも効果的に対応し、特に企業リスクの管理、業績の監視、統合した情報による知見の獲得を大きな強みとしています。
調査結果では、バリュー・インテグレーターを擁する企業のROIC(投資収益率)、収益成長率、EBITDA(金利・税金・償却前利益)といった財務指標がほかの回答企業を上回っているという結果が出ています。バリュー・インテグレーターを目指すことが、企業成長の鍵であるのは、こうした結果によって裏付けられています。
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