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化粧品業界に新風を吹き込み続けたい――イプサの堀社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(3/3 ページ)

肌診断器を介した肌基点のカウンセリングを通じて、お客さまの肌に最もふさわしい化粧品を一緒に選ぶ、これは当時の化粧品業界では新鮮な販売方法。e-コマースでも「他とは違う」にこだわる。

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資生堂とは違う、というこだわり

 堀社長の部屋には資生堂の匂いのするものはありません。資生堂社員が全員所持している、花椿手帳も使っていません。創業の思いを貫こうとすれば、資生堂色を無理やり排除することが必要です。そんな文化を作っているせいか、イプサに就職した人は資生堂を全然知らない人もいるようです。堀社長は、自分たちのような出向社員のほうが問題で、なにかと資生堂と比較する人もいますが、それはイプサには必要もないと言います。

 堀社長がイプサを率いていることこそがイプサの武器かもしれません。なぜなら、ドイツ、カナダ、ニューヨークと海外経験が長く、これらの国では、資生堂はナンバーワンブランドではありませんでした。強い資生堂で育ったわけではないのです。

 しかし、会社経営の問題は、皮肉にもアンチ資生堂で始まったことにあったそうです。24年前に資生堂と別れた形のイプサには、24年前の資生堂の経営風土が残っていました。本体は組織風土改革していても、イプサはその改革に乗らず、堀社長が就任当時は、旧態依然として残った決済とか会議体、虚礼がありました。

 それが、海外を経験し、日本の仕組みも、強い資生堂も知らない堀社長が仕組みを変えていきました。歴代の社長と違い、外国人を通り越して宇宙人とも、ベンチャー企業の社長のようだともやゆされました。しかし、変えなくてはいけない縦割り、上下関係など組織風土を変え、変えてはいけないブランドコンセプトは変えませんでした。捨てるものと残すものを、悩み続けて今に至りました。

 そして、イプサをワクワクするようなブランドとして再び輝かせたい、個性際立つブランドにしたいという思いで、ロゴにワクワク感を加え、CIも変え、カラースラッシュを入れました。今のイプサのカウンターに行くと、以前の淡いイメージとは違い、深い海のようなイプサブルーのアクセントがシャープに光るようになりました。クルーのユニフォームの袖口のイプサブルーが、イプサの自信をうかがわせます。

 これからの目標としては、就任当時に宣言した楽しくて楽しくて仕方ない会社にする。「ママが働くイプサで働きたい」と子供から言われたら、大手を振っていらっしゃいと言える会社にしたい。事業では国内においては、77店舗で76億円の店頭売り上げを、2016年には100億に。海外は、中国を中心に展開を進め、こちらもe-コマースに力を入れていきます。

 私生活では、家に帰れば料理を作るのが自分の役目と豪語する堀社長。端正な姿に似合わず完璧なまでの体育会系で、今でもプロ野球の選手になりたいとひそかな願望を持っています。わが人生に悔いなし、と言い切るほど、野球が好き。大学時代の優勝できない、勝てない、打席に立っても打てない時の悔しさに比べたら、仕事の悩みなどないも同然だそうです。仕事で燃えるのは策打って成果があがったとき、やるからには成果! といまだに野球部所属です。

著者プロフィール

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO

ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。


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