クセモノ “On-Target Earnings”:ヘッドハンターの視点(2/2 ページ)
前年同期比で約15%売上を伸ばしたにもかかわらず、その数字は今期売上目標の70%にしかならず、Dさんにはボーナスがほとんど出ないというのです。
ところが、1年後のある日、Dさんから「話が違うんです。相談に乗ってほしい。」と連絡がありました。Dさんによると、前年同期比で約15%売上を伸ばしたにもかかわらず、その数字はDさんに課せられた今期売上目標の70%にしかならず、Dさんにはボーナスがほとんど出ないというのです。C社ではあらかじめ決まった額のボーナスが支払われていたこともあり、Dさんは普通に仕事をしていれば、オファーレターに記載されたOTEは当然もらえる額だと思っていたとのこと。また面接時にE社の人事担当者からは「“Target”を超えればボーナスの上昇率は加速します。例えば120%目標達成すれば140%としてボーナスを計算します。さらにボーナスは青天井(上限がないこと)です」と説明されたそうです。
「目標達成しなかった場合のことは聞かなかったんですか?」と聞くと、Dさんは「聞いたかも知れませんが……よく覚えてません」とのこと。誰しも聞きたくないことはあまり耳に入らないのかもしれません。
E社は“Target”の設定が高く、一部の人しか目標達成ができないけれど、達成したら高額なボーナスが支払われるハイリスク・ハイリターン型の給与制度で知られていました。DさんにはOTEからリターンは見えてもリスクの部分は見えていなかったようです。
“Target”をどう設定するかは企業の個性で、正しいとか間違っているとかではないと思います。E社のようにハイリスク・ハイリターン型の企業もあれば、ローリスク・ローリターン型の企業もあります。また、社員がどちらかを選択できる企業さえあります。
また、目標の50%達成すれば50%分のボーナスはもらえると決め込んでしまう人がいますが、最低でも目標の70%達成しないと支払いは0というケースもあります。転職のタイミングが期中だった場合、OTEの基となる具体的な数値目標が決まっていないなど、不確定要素があることも珍しくありません。さらにややこしいことに、企業によってボーナスの支払い頻度や時期も違います。年1回の企業もあれば、四半期ごとに支払われる企業もあります。1月から12月までの業績に基づいてボーナスを計算して、支払いは2月ということもよくありますが、2月に在籍していなければボーナスは支払われない企業もあれば、1月に退職していても2月にボーナスが支払われる企業もあります。ボーナスだけとっても企業によってさまざまで、書きだすときりがありません。
“分かったつもり”になって、後から「話が違う」となっても、その都度例外を作っていたら会社は大変なことになります。(よほど悪質なケースを除いては)会社も採用しようとする人をごまかそうなどとはしていないし、オファーレターにサインする前にしっかり会社の制度を理解してほしいと考えているはずです。人事担当者の話をよく聞いて、分からないことは質問して正確に制度を理解することはお互いにとって大切なことです。正確な情報がなければ“よーく考える”ことができないし、他にも大事なことはたくさんあるけれど、やっぱり“お金は大事”なのですから。
著者プロフィール
岩本香織(いわもと かおり)
USの大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネージャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリー(KFI)入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年KFI復帰、テクノロジーチーム日本代表。2002年〜2006年テクノロジーチームAsia/Pacific代表兼務。2010年8月KFI退職。2010年9月より現職。
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