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思考を中断しない俊敏性こそがiPadの最大のウリiPadで躍動する職場(2/2 ページ)

日ごろ精力的に駆け回るビジネスマンにとってiPadの魅力とは何か。タルク・アイティー社長で、ITmediaのオルタナティブ・ブロガーとしても活躍する谷川耕一氏に語ってもらった。

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実はセキュアなiPad

 企業利用を考えた際のもう1つのメリットが、セキュア端末としての存在だ。いわゆる個人情報保護法の施行以降、企業ではノートPCの持ち出しを禁じているところが多い。そのような状況下でも、iPadは携帯電話と同様のカテゴリーに入るものとして、持ち歩きを許可している例は多いようだ。

 iPadのセキュリティ性を高めている要因に、「App Store」で正式に配布されているアプリケーションでなければインストールできないという点が挙げられる。App Storeのアプリケーションは、Apple社がすべて審査を行っているので、誤って不正なアプリケーションをインストールして、ウイルスなどに感染してしまう可能性は極めて低い。

 さらに、悪意のあるWebサイトにアクセスしてしまい、そこからウイルスをダウンロードしてしまったとしても、それがiPadにインストールされ、実行されてしまうということはまずない。この、アプリケーションのインストール制限は、同様のタブレット端末OSであるAndroidを搭載したデバイスとの大きな違いだ。Androidの自由度を評価する声は大きくなりつつあるが、セキュリティ面を考えた場合には、Appleによる統制がプラスに作用するだろう。

 iPadにmicroSDカードのような記憶媒体がないのも、セキュリティ面では大きい。携帯電話やスマートフォンではいまや当たり前のmicroSDカードだが、仮に携帯電話を遠隔操作でロックできても、挿入されているmicroSDカードを取り出せば、中身のデータはPCなどで簡単に閲覧できてしまう。実はこのような記憶媒体はかなり大きな情報漏えいリスクになる。利便性ではマイナスでも取り出せる記憶媒体がないということは、結果的にはiPadのセキュリティ性を高めることになる。

 とはいえ、iPadは携帯電話と異なり、さまざまな文書やファイルを内部に保持できる。最近注目を集めているオンラインストレージサービス「DropBox」や「SugarSync」などを活用すれば、簡単にデータをiPadに移行できる。オンラインストレージの便利さをとるか、情報漏えい対策のためにこれらサービスの利用を制限するかは、企業の判断次第だ。例えば、SugarSyncでは、企業向けのオンラインストレージも用意しており、ログをとったり、アクセス制限をかけたりする機能もある。オンラインストレージの利便性を確保したいときには、これらビジネス向け機能を自社のセキュリティポリシーに照らし合わせてみるといい。

 企業でiPadを採用する際は、重要情報の漏えい対策のためにパスワードロックも必須だ。初期状態では、パスワードは単純な4桁の数字を入れることになっているが、もっと複雑なパスワードに変更するべきだろう。こうしておくだけでもセキュリティレベルは高くなる。個人的には、指紋認証のような生体認証の仕組みがあればなお良いと考えている。

 さらに、iPadにおけるセキュリティ面の不安を解消しているのが、「MobileMe」というApple提供のサービスだ。これに加入すれば、どこかに置き忘れたiPadを探したり、遠隔操作でロックをかけたり、端末内の情報を削除したりすることが可能となる。ただし、この機能を活用するには、iPadがネットワークにつながっていなければならない。Wi-Fi版のiPadでは落としたり盗まれたりした際に、それがネットワークにつながっている可能性は低い。そうなると、企業でiPadを採用する際には、3G版の方が好ましいということになりそうだ。

ルールを決め、必要なセキュリティ対策を

 以上のように、iPadのセキュリティ面を強調してきたが、もちろんすべてにおいて完璧だというわけではない。現状ではまだリスクも多く、厳しいセキュリティポリシーを持つ企業では採用基準に合致しないかもしれない。そうした企業では、利用方法をルールで制限したり、適宜、Webベースのアプリケーションを活用したりすることで、セキュリティポリシーに対応させる必要がある。

 また、iPadから社内のさまざまなアプリケーションにアクセスできるようにしながら、iPad側に一切データを残さないような仕組みも既に登場している。このような仕組みがあれば、iPadをシンクライアント端末のように利用できるのでセキュリティ性は高まる。

 セキュリティ性の高いアプリケーションをiPadに導入する手もある。アプリケーションの利用ログを取得し、オンラインになった際にそれを自動でサーバに送信する機能や、ダウンロードしたコンテンツに有効期限を設けておいて、期限が切れたらiPadから自動的に削除してしまうなどの機能を持ったアプリケーションを開発、導入すれば強固なセキュリティ環境が築けるだろう。

 繰り返しになるが、きちんとルールを決め、必要なセキュリティ対策を施すことで、iPadは現状でも企業が十分に利用できるモバイル端末になるはずだ。そうであれば、もはやiPadの俊敏性という最大の武器をビジネスの場で活用しない手はないのである。

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