上司は部下の盾になっているか〜その2:生き残れない経営(2/2 ページ)
実に皮肉なことだが部下の「盾」となる前に考えて欲しいことがある。自分が権限を振り回していないか? まずは上司がとしての自分が自分自信の「盾」になれということだ。
2、実行の方法
さて、心構えだけで事態は改善されない。いかに実行に移すかだ。方法論が欠かせない。ただ、重要なことを断っておかなければならない。上司が部下の「盾」になれと言っても、部下を純粋培養しろと言うのではない。部下には、雑用も仕事のうちで必要なことだ。雑用は、企業人の耐性やたくましさ、バランス感覚などを養う一助になり得る。「盾」になれということは、明らかに無駄なことに時間を浪費することから部下を守れ、ということだ。
では、「心構え」を実行するための具体的方法である。
(1)自己研さん:まず、何よりも経営陣はじめ管理者は、経営能力を高めるための自己研さんに必死に努めなければならない。そうすれば、例えば権限委譲なども妥当に行われ、理不尽な部下への干渉が避けられる。
(2)幹部研修:上司が部下の「盾」になることを、幹部研修の必修科目として取り上げ、管理者に徹底的に叩き込む。
(3) 鈴付け役:部下をディスターブするインベーダーに鈴をつける役を上司は責務と思い、常に鈴をつける相手を探し続けることだ。但しその場合のコツは、鈴を付けたり警告を発したりするだけでなく、「代替案」を示すことだ。
(4)部下申告:部下が困っていること(ディスターブされていること)を申告させる、あるいは上司が現場に降りて行って、部下から聞き出すことに努めるべきだ。
(5)無能と恭順:これはサットン教授の主張で、興味ある内容だ。「創造的無能」と「悪意に満ちた恭順」を実行しろという。前者は、部下を重要な業務に専念させるため、さほど重要でない業務を押し付けられた場合、適当にさっさと片付けろということ。後者は、上からの愚かな命令に逐一従い、仕事を失敗させることだ。但し、サットン教授は断る、これらは「最後の手段だ」と。
なお、最後にサットン教授の忠告を借用する。「優れたボスは部下を守る必要性と自分自身のニーズとのバランスを取る」。飛行機内で、他人を助ける前に自分の酸素マスクをつける必要がある、というわけだ。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。
その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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