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コールセンターが変わるクラウドとソーシャルメディアの威力──ベルシステム24石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/2 ページ)

30年の歴史で培った現場力と最新の情報技術は、チャレンジし続ける文化の中で新たなサービスを生み出し続けた。グローバルも視野に入れた今後の取り組みとは。

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コールセンターのポジティブな価値

 山中さんは、コールセンターの企業価値は2つあると言います。ひとつは、お客様に近いので、直接売り上げに貢献することができる。もうひとつは、VOC(Voice of Customer)というお客様の声が集まりやすいので、それが、商品改革、サービス改革などの改善につながることです。コンタクトセンターはコストセンターという風に見られがちですが、この2つの有益な価値は活用すればビジネスの拡大につながります。

 最近活用されているTwitterによる対応でもこの価値がよく分かります。通常、コンタクト部門にコールが入ってくるのは数ある声の氷山の一角にすぎません。しかし、そこで負の連鎖が起こるようなキラーワードが語られることがあります。それを防ぐためにはその芽を摘む、つまり、氷山の一角が現れるのを待つのではなく、自ら外の声を拾いにいくことが大切なのです。例えば、「つながりにくい」というVOCがあったとします。これをTwitterで改善する内容を返せば、そのつぶやきはコンタクトセンターに電話を掛けようと思っていた人の目にも触れ、電話の数が減るはずです。デジタル対応を厚くすることにより、お客様には有益な情報を随時提供でき、コンタクトセンターにとっては高コストの電話対応が減ります。

 また、ソーシャルネットワークで広がる口コミが夜間のうちに噂が広まれば、次の日に顕在化することが多く、その場合もこのような種類の問い合わせが増えるだろうと事前にコミュニケーターに周知をすれば、慌てる必要がなく対応時間も早くなります。ゲーム機の新商品が出るときなど夜中のモニタリングはよく行われます。もちろん、VOCには、ポジティブなものもネガティブなものもありますが、どちらにも事前に準備をして対応することができます。どうでしょうか? いいことだらけ、という気がしませんか?

 デジタルマーケティングの視点から、ベルシステム24は、かなり先進的です。しかし、山中さんは米国のCRMサービスは5年程度進んでいるため、そのエッセンスを提供しながらも日本流にアレンジしたいと考えています。今後、デジタルマーケティングでカスタマーサービスも変貌していきますが、決してシェア争いではなく、CRMかくあるべし、お客様の経営をピカピカにできるエンジンを提供する会社でありたいと山中さんは考えています。そこでクラウドを導入し、ソーシャルの世界にも積極的に飛び込んでいるのです。

グローバルさえ目の前にある

 今後のベルシステム24の展望の中に、グローバル展開があります。クラウドは昨年6月から動き出し、まだ道半ばです。ここ1年から1年半で1万席を統合する予定ですが、それは目的ではなく、心臓部とすべてのKPIがつながり、社内イントラにたとえるとコールセンターがあたかも“シンクラインアント化”したかのような状態にしたいと考えています。それを、国際展開し、アメリカのお客さまの声をアジアで受けるというような、地球規模の対応を可能にしたい。今、海外のセンターは大連にしかありませんが、地球規模に広げるのは時間の問題、プラットフォームが整えば、次は採用です。ベルシステム24はプロフェッショナルの集まりとして、変貌を遂げています。

著者プロフィール

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO

ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。


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