シンクライアント導入で重要なのはデジタル化でやりきるという“志”:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)
アナログの情報をデジタル化することで、ネットワークを介し、いつでも、誰でも、どこにいても、同じタイミングで情報を利用できるようになる。そのためには、シンクライアント活用という手法がある。
大和証券でシンクライアント1万5000台を導入
金融機関では、1960年後半から第1次オンライン、1980年代の第2次オンライン、1990年代の第3次オンラインとIT化を確実に進めてきた。しかし第4次オンラインでは、、ホストからのダウンサイジングやデータウェアハウスの構築、モバイル活用、ウェブやソーシャルの活用など、金融機関ごとにデジタル化戦略はさまざまとなった。
大和証券は、1万3466名(2015年3月31日現在)の従業員が、140店舗(2015年1月末現在)で、有価証券等の売買やその媒介を柱とした事業を展開。ビジネスの変化に迅速に対応できるIT環境の実現、エンドユーザーコンピューティングで各端末に導入された個別システムの一元管理、災害対策・バックアッププランを含むBCP(事業継続計画)対策の確立などを目的に、1万5000台のシンクライアントを導入した。
2003年より、シンクライアント導入の検討を開始。2005年より、クラウド環境の基盤となる仮想化サーバを構築し、2007年にまずは本店にシンクライアントを導入。その後2013年から営業店ネットワークの更改に合わせて、2014年4月から9月にかけて全店にシンクライアントの展開を完了させた。シンクライアント導入の最大のポイントは、セキュリティの強化と人材の流動性の確保、端末の管理性向上である。鈴木氏は、次のように語る。
「目指したのは、"どこでもコンタクトセンター(標準業務)"の実現である。例えば、ある店舗が災害などで機能しなくなった場合でも、ほかの店舗や自宅など、どこでも業務を継続できる仕組みだ。このときもっとも大切なのは、システムを止めないことだ。大和証券は市場取引の仲介をしているので、システムが止まるとお客さまが株式等の取引ができなくなってしまう。株式売買は時間との勝負であり、安全性と高速性の両立が必須要件だった」
またBCPの観点からも、リソースの無駄を省きながら、信頼性、可用性を向上させるために、2つのデータセンターのシステムをアクティブ・アクティブで冗長化している。これにより、どちらかのデータセンターがダウンしても、切り替えることなく、もう一方のデータセンターで業務を継続することができる。鈴木氏は、「今現在、安定して稼働しており、利用者の評判もいい。またセンターの省電力、省スペースなどの効果も得られている」と語る。
しかし、シンクライアント導入の真の恩恵は業務改革の実現である。これまでは店舗ごとに使用頻度の低い事務や特殊な事務、一部の人しか知らない事務などが存在していた。これらを一旦廃止し、すべてを単純化し標準化された事務にすることを目指している。鈴木氏は、「ビジネスの自由度を奪う複雑な事務はそもそもコンピュータに向かない、その特性を生かすには事務をシンプルにすることで、コンピュータ利用の原点に回帰した」と話す。誰もができる事務になれば、140店舗の人材の流動化も可能になる。
鈴木氏は、「現在、放映されている大河ドラマで、吉田松陰が"あなたの志は何ですか"と問うシーンがある。それでは、シンクライアント導入における"あなたの志は何ですか"と問いたい。デジタル化でやりきるという"志"が重要であり、決してアナログに戻してはいけない。デジタル化さえしていれば、後はテクノロジに任せればいい。業務は極力シンプルに、紙を使えばまた何通りものお作法が生まれてしまう。そのためにはシンクライアントの活用が最高の手法である」と語り講演を終えた。
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