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成功している企業のトップの仕事はチームで行われているビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

トップマネジメントはチームで行う仕事だということを知ってほしい。これが実現できなければ企業は成長どころか存続もできない。

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3、大企業の経営チーム

 大手企業は、事業の規模、抱える社員の数からして、中小企業の合衆国だ。事業ごとに、トップマネジメントチームが必要だ。組織の大きさから、あらゆる仕事は正式なルートで進めなければならないため、意思疎通に多くの時間をとられる。

 「調整」という名の根回しに時間と労力を奪われる。気がついたときには官僚的な組織になっていて、お客さまよりも組織の内部事情が優先されるようになり、社内手続きそのものが仕事となっている。したがって、大手企業の経営チームが行うべきことは3つ。

 1つ目は原点回帰。そのために「5つの問いで経営の根幹を問いただす」ことを行ってほしい。2つ目は、現場から疎くなっているトップは顧客の生の声を聞くことを仕事に組み込むこと。3つ目は、もはや人材育成ではなく、社内に経営人材の育成機関を新設すること。

 ひとつ補足します。大手企業は組織も大きく、既に仕事が複雑に絡み合っているため、融通の効く人間に仕事が集中します。その結果、1人が多くの兼任を担うようになり、責任と権限が無法地帯となり、属人的な利便性に回帰していく。

 一度は整えられた組織はこうして歪みはじめ、組織の力はいつの間にか低下していく。兼任が多いのは、トップが挑戦を避けている表れである。将来、確実に事業の成長は減速するので、今のうちに組織の再編と人員配置の見直しを行ってほしい。

  • 具体的な仕事術

(1)経営の根幹を問いただす

(2)顧客の声を聞くことを仕事に組み込む

(3)経営人材の育成機関を新設する

 最後に、大企業の経営チームについて補足する。大企業は、経営チームがチームとして機能しているかどうかは別として、既に経営チームがある。取締役は1つの部門の責任者を兼任している場合が多い。実際、取締役は担当部門の仕事でフル回転で、取締役としての仕事に手が回らない。経営チームがチームとして機能しない原因だ。私もそんな時期があったからよく分かる。ドラッカーは、組織がある程度大きくなると、取締役と部門の責任者を兼任することは好ましくないという。

 ドラッカーは、著作「イノベーションと企業家精神」でこう言っている。

事業部を担当する者はトップマネジメントの仕事を行うには忙しすぎる。そのためトップマネジメントとしての貢献は何らできない。トップマネジメントの責任を担う者は、トップマネジメントの仕事ではない責任を担わなくてもよいようにする必要がある。トップマネジメントのメンバーとなった者は、それまで担当していた仕事からは完全に手を引かなければならない。誰かに引き継いでしまわなければならない。さもなければ、いつまでたっても現在の仕事から足を洗うことはできない。

 あなたがもし、大企業の経営チームのメンバーであれば、今後の事業の繁栄のために、会社全体の責任と事業部の責任を切り離して、経営チームのメンバーの仕事を組み立てていってほしい。

著者プロフィール:山下淳一郎 (やました じゅんいちろう)

ドラッカー専門のコンサルタント

東京都渋谷区出身。中小企業役員と上場企業役員を務める中で、ドラッカーが提唱する「経営にはチームが不可欠である」ことを痛感。現在は上場企業をはじめ、様々な業種にわたる企業の経営チームの構築から運営にドラッカーを活用するコンサルティングを行うほか、次期経営者育成を目的としたマネジメント教育に携わる。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。


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