Fintechは当たり前のサービスとして普及する有望市場(2/2 ページ)
早稲田大学IT戦略研究所が開催するエグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム(ELF)の通算第71回目の定例会では、「Fintechがもたらす産業構造変化とビジネスモデル革新」をテーマに議論が展開された。
貸付型クラウドファンディングのこれから
お金を借りたい人(借り手)と貸したい人(投資家)をウェブサイトでマッチングするソーシャルレンディングサービス「maneo(マネオ)」における借り手側ユーザーの管理を事業として展開するmaneo。同社は2008年10月に、日本で初めてソーシャルレンディングサービスの提供を開始した先進的な企業である。
ソーシャルレンディングサービスの仕組みは、次のとおりである。まず借り手がmaneoに融資を申し込むと、maneoが借り手を審査し、問題がなければ投資家への募集を行う。投資家から投資があるとローンファンドが成立し、投資された資金を借り手に貸付実行。借り手から返済されると、元金および利息を投資家に分配する。
maneoの仕組みは、ソーシャルレンディングサービスを提供するほかの企業にも提供されている。第1弾としてLCレンディングが2015年7月より、maneoを導入したソーシャルレンディングサービスの提供を開始している。代表取締役社長の瀧本憲治氏は、「この事例でmaneoのプラットフォームを導入したいという企業が一気に増えました」と話す。
例えば2015年11月には、ガイアファンディングが、アメリカの不動産投資案件を担保付で提供するサービスにmaneoのプラットフォームを採用した。ガイアファンディングが提供するソーシャルレンディングサービスは、マネーフォワードのサービスメニューのひとつとしても提供されている。
そのほか、飲食店のリース事業を展開する企業や香港の消費者金融などの企業も、maneoのプラットフォームを導入したサービス提供を予定している。瀧本氏は、「ガイアファンディングから学んだのは、米国の方が日本より規制が厳しいということです。そのためわれわれのサービスが、海外で高く注目されているのです」と語る。
maneoでは、現在までに約420億円の貸出実績があり、ユーザー登録件数は約3万2000人、アクティブユーザーは約3500人に上る。いまのところ貸し倒れが発生していないので、優良な商品ということができる。今後、貸し倒れが発生した場合に、いかに乗り越えることができるかが最大の課題になる。
今後はいかにより多くのお客さまにmaneoを利用してもらうかだ。その一環として、GMOクリックホールディングスと提携し、GMOクリック証券でmaneoの商品を販売する取り組みを推進している。この取り組みが成功したら、ほかのオンライン証券会社との連携も目指している。
「海外では、1兆円を超えるソーシャルレンディングを行っている企業もあります。われわれは、まだブランド力がないので実績で示すしかないのですが、日本のソーシャルレンディングは、海外から高く注目されているので、日本のビッグネームと提携できれば、一気に市場を拡大できると期待しています」(瀧本氏)
モバイル決済サービスの未来
Squareは、スマートデバイスにカードリーダーを差し込み、クレジットカード決済をするためのサービスを世界で初めて開発し、提供している企業である。中小規模の事業者に対し、誰でも、簡単にビジネスができる環境「商業活動をもっとかんたんに」がSquareのDNAであり、すべてのプロダクトがこのDNAに基づいている。
Squareのサービスが誕生した背景には、Squareの共同創設者であるジム・マッケルビー氏の経験がある。同氏は、Squareの共同創設者であるとともにガラス工芸作家でもあるが、作品を販売するためにクレジットカード会社に加盟店登録を申請したが、個人事業主であるために申請を受理されなかった。
そこで、Squareの取締役会会長兼CEOで共同創設者であるジャック・ドーシー氏に電話で相談しているときに、「スマートフォンでクレジットカード決済ができないか」と考えたことがSquare創設のきっかけだったという。これにより誕生したのが、小型で安全なクレジットカードリーダーであるSquareリーダーだった。
Square日本法人代表の水野博商氏は、「以前のクレジットカード決済サービスは、ブランドごとの契約が必要、月額手数料がかかる、専用線が必要、煩雑なオペレーションなどの制約がありました。Squareは、こうした制約を取り除くことで、2015年10月現在、アクティブ加盟店が200万を超え、推定年間取扱高は380億ドルを超えています」と話す。
日本市場では、2013年5月よりSquareサービスの提供を開始し、すでに十数万件のアクティブ加盟店で利用されている。Squareリーダーをはじめ、オンラインで請求書を作成、送信できるSquareインボイス、スマートなビジネス判断が可能なSquareデータ、POSシステムを構築できるPOSなどの製品で構成されている。
例えば飲食店がSquareサービスを導入することで、タブレット端末だけで、会計をクレジット決済し、POSシステムにデータを蓄積して、Squareデータで売り上げ分析や在庫管理などを行うことが可能。Squareインボイスで請求書を作成し、メールで送信することもできるほか、クラウドサービスの会計システムと連携することもできる。
「Squareサービスは、いつ、どこで、だれがクレジットカード決済を行ったのかをリアルタイムに把握できます。これにより、通常1カ月程度かかる店舗の審査が5分程度で可能になります。またクレジットカード決済の資金化が翌日には完了するので、中小規模の事業者にとって、非常に有効なサービスといえます」(水野氏)
最後に根来氏は、「Fintechという言葉は、それが当たり前にあるにつれて使われなくなると思いますが、金融のサービスがバックエンドでつながり、リアルタイムに利用できるというトレンドは、これからも変化しません。Fintechがこれから先、ますます普及していくと考えています」と話し、定例会を終了した。
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