ニュースリリース(NR)が白状する企業の本質――良いNRはその在り方を表す:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(3/3 ページ)
ニュースリリース作成力強化は、広報力のみならず、経営力強化にもつながる。
10、6W5Hで考える! 「5W1H」はビジネスでは不十分
5WにWhom(誰に、誰と対象を示し)、HowにHow much金(売上高など)、How many数(生産数など)、How long(期間)、How in the future(将来見通し、今後の方針)の4Hを追加すると質問も間違いも減ります。「質問予測力」の強化向上が課題です。
11、会社の親切さ・思いやりを感じる
知りたいことを網羅することにより問い合わせの手間は省け、切り口やテーマの構想が容易に理解でき、取材が早くなります。親切な広報に詳しい話を聞いてみたくもなるでしょう。それは実は広報のみならず社員一人一人、会社全体が親切な証しです。経営幹部は内外への適切な情報交通が円滑に実行されている真(まこと)の会社を目指しましょう。
NR五つのキーワード「簡(かん)、豊(ぽう)、短(たん)、薄(ぱく)、情(じょう)込めて」+「VV&I」=Value,Visual&Impact!
NRは価値を濃縮した独創的な情報です。作品=アート、作成者はアーティストです。書家が1本の線、画家が色一つに丹精を込め生命を吹き込むように、1語1語自らの情熱を傾けて結合することによって意味を産み出します。レイアウトも独創的で分かりやすく、読んで分かるより見て分かるように、読む人の時間や労力を奪ってはなりません。これは顧客へも同じです。
1、簡:ですます調、あるいは断定調で簡潔簡明に。1字でも無用な字を減らし記者の読む手間を省く
2、豊:伝えるべき、間違ってはならない数字や表現を、豊富な情報やデータで網羅する。記者が欲しい、読者や視聴者に伝えるために必要な情報を提供する。そのためにVisual&Colorfulに気を付ける
3、短:一文を短く。コンマ<フルストップ。「段落+小見出し+箇条書き」を常に念頭に!
4、薄:1〜3枚。資料で補完
5、情:情熱を込めて書く。熱意が筆を進める。「今後の方針」で意志、意図を明確に示す
これに、「VV&I」=Value,Visual&Impact! を加えて、記者に魅力的な、喜ばれる作品を作るのです。「真理はそのままでもっとも美しく、簡潔に表現されていればいるほど、その与える感銘はいよいよ深い」(ショウペンハウエル『読書について』)のですから。
まとめ
適切なNRは広報と記者双方の(1)理解時間短縮、(2)問い合わせ時間労力軽減、(3)間違い皆無に多大なる効果を導きます。それは、
1、社内の情報コミュニケーションが円滑になり、活発になっている証し
2、商品・サービスを常に顧客や社会の視点で見て表現する気風が生まれ、社員一人一人が親切になり、思いやりを持つ社風になっている証し
3、企業体質が次第に良好な方向へ変革している証し
経営幹部は、この機にNRの重要性を高く、かつ幅広い次元から再認識し、作成から承認のプロセスをいま一度点検し、新たな視点、異なった観点からその不備と不親切さを省みて改善の余地を探り、自社の意志や意図を込めて、より顧客や記者に親切で思いやりのあるNR作成を心掛けましょう。
そうすれば、目に見えにくいのですが、着実な進化と向上が期待できます。
著者プロフィール:山見博康(やまみ ひろやす)
広報・危機対応コンサルタント、Value Integrator(価値統合家)九州大学特別講師・大妻マネジメントアカデミー講師。
1945年福岡県生まれ。1968年九州大学(経)卒。神戸製鋼所入社。1979年より一貫して広報に携わる。1981年広報課長の後、日豪政府協力事業にてメルボルン駐在広報担当。1991年広報部長、デュッセルドルフ事務所長を歴任。1997年スーパーカー商業化ベンチャー企業および経営コンサル会社に出向。2002年山見インテグレーター(株)設立。
- 10年に及ぶ海外生活や大小企業における豊富な実戦経験に基づいて、広報PR・危機対応・マーケティングに関するコンサルティングを中心に、セミナー講師、メディアトレーニングや執筆活動を行う。豊富な実務経験を基にした実践的講義や演習を交えた講師に定評あり。
- 米ダートマス大学エイモスタック経営大学院マネジメントコース修了
- 主な著書:『ニュースリリース大全集』、『勝ち組企業の広報戦略』、『企業不祥事・危機対応広報完全マニュアル』、『広報・PRの基本』他多数。
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