当事者意識が全ての原動力〜空き家問題を動かす〜:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
2033年に3軒に1軒は空き家になるとの予測もあり、隣は空き家という状況が、どの市町村でも見られる風景になる。今後さらに空き家率が上昇すると、生活インフラの維持・管理も難しくなる地域が増える。
事務局には大分県別府市から職員を迎え、官民が連携しやすい体制を作り、さまざまなルートを通じて、全国の首長とのネットワークを構築しています。
現在では、空き家の利活用や移住・定住、人材育成などについて別府市、武雄市、三重県などと個別に連携協定を締結し、官民連携の橋渡しの機能も担っています。
(3)地方創生に積極的な自治体との連携
LIFULL在籍時に、地方創生推進部を創設し、岩手県釜石市、福井県鯖江市、宮崎県日南市、岡山県総社市と空き家の利活用を通じた地域活性化連携協定を締結しました。
「空き家の掘り起こし、集約、発信」「遊休不動産の利活用」「民泊推進」「これらを推進する人材育成」をテーマに取り組んでいます。
退職後は、内閣府地方創生人材支援制度を活用して、2019年4月からは茨城県境町の参与兼戦略会議委員として、行政の立場から“まちづくり”に携わっています。
境町は、茨城県の県西地区にあり、人口24127人(2019年9月1日現在)の鉄道・駅がない小さな町。そんな小さな町でも独自の英語教育強化や隈研吾氏設計の道の駅「さかい河岸レストラン茶蔵」の開設、利根川大花火大会などを通じて、移住・定住の促進、関係人口増加に取り組んでいます。
ふるさと納税(平成30年度全国8位)や企業版ふるさと納税(令和元年全国1位)も積極的に取り組んでおり、5年連続で財政の健全化も実現しています。今年9月には全国初の定路線の自動運転バス運行もスタートする予定です。
4、持続可能なまちづくりのヒント
2018年10月に世界一美食の街サンセバスチャンに、2019年7月に全米で最も住みたい街として有名なポートランドにそれぞれ訪問しました。
訪問して感じたことは、行政の役割はもちろん重要ですが、持続可能なまちづくりに、そこで暮らす住民たちが自分ごととして関わっているということです。
全て行政任せにするのではなく、そこに暮らす住民自身がどういう“まち”にしたいかを考え、行政と一緒になって取り組んでいるのです。
日本での経験や海外事例から、持続的なまちづくりには次の6つのポイントが重要と考えています。
- 車中心から人中心のまちづくりへの変換
- まちとしてのビジョンの明確化と宣言
- 横並び行政からの脱却
- 住民同士の”チエ”と”スキル”のシェア
- 多様なアメニティーの集積
- エンターテインメント(スポーツ)の存在
ここ数年、日本においても各地でさまざまな個性的で魅力的な街が生まれつつあります。首長のリーダーシップと住民を巻き込む力が、若者の“こころ”に火をつけ、魅力的なまちづくりが芽生えています。そうした地域では、空き家もまた利活用され、生かされるのです。
「未来は自分たちが作る」。そんな思いで“まちづくり”に取り組む地域が増えることを期待しています。
著者プロフィール:田村 剛
1984年株式会社リクルートに入社。
不動産・住宅領域(現SUUMO)にて部長、事業部長を歴任。ブライダル領域のカンパニー長を経て、 2004年には中国上海にリクルート初となる事業会社を設立し、董事長兼総経理として約2年間駐在。帰国後、アクティブシニア向け情報誌事業の立ち上げを行い、同社を退職。 2010年6月株式会社LIFULL(東証一部)に執行役員として入社。 海外担当執行役員として中国、台湾、タイ、インドネシアで不動産ポータルサイトへの出資および現地法人の設立を推進。その後、国内事業のLIFULL HOME‘S副本部長として業績拡大に貢献。2017年に国土交通省から「全国版空き家・空き地バンク」の開発・運用の委託事業者として選任され、1年で540を超える自治体が参画するLIFULL HOME’S空き家バンクを立ち上げる。また、地域活性化を推進するために地方創生推進部を創設し、鯖江市、釡石市、日南市、総社市とそれぞれ空き家に関わる包括提携を締結し、空き家の利活用を推進。同年「一般社団法人全国空き家バンク推進機構」の設立にも関わり、理事に就任。2018年10月株式会社LIFULLを退職し、2019年4月より茨城県境町の参与兼戦略会議委員として“まちづくり”にも携わっている。
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