FLAT化とは何か。つまるところ、私たちの選択肢が広がるということだ。以前は「正解」や「公式」が決まっていて、誰もがそれを目指せばよかった。しかしさまざまな要因によってFLAT化が進むと、私たちがとりうる選択肢が増えることになる。
問題は、選択肢が増えることが私たち一人一人にとってハッピーかアンハッピーか、ということだ。もちろん多くの人にとって、選択肢が増えることはハッピーだ。しかし、「さまざまな選択肢から自分で自分がとるべき道を選択することができない」一部の人にとっては、選択肢が増えることはアンハッピーになる。実はそういう人も多いかなと思う。
私が社会人として働き始めた90年代前半、ちまたでは「カジュアルフライデー」といって金曜日は自由な服装ができる取り組みが流行した。そこでみんな喜ぶかと思いきや、案外、多くの会社員が「背広を着ていれば楽だったのに、自分で服を選ばなければならないのは憂鬱(ゆううつ)だ」と言っていた。選択肢が多いことは時に人を不幸にするのだ。
つまり、選択肢が増えたときに、どうするか自分で選べる人はFUN(ハッピー)だし、そうでない人はFUNではない、ということだ。だから求められるのは、「自分で自分のとるべき道を選択する」つまり、自分で自分をリードしていく=Lead the Selfが、FREE、FLATな社会では求められる(FUNになる)のだ。
この3つが私たち一人一人が未来に向けて生きていくうえで、必要なスタンスだと私は考えている。すなわち、FREE=常識にとらわれず、FLAT=みんな違ってみんないい世界で、FUN=自分で自分をリードする(Lead the Self)、ということだ。
そしてそれは個人の生き方のみならず、これからの社会においても求められるものだと考える。さまざまなことについてこれまでの常識にとらわれずに何がベストかをみんなでFREEに考えながら、全ての人々が、お互いの個性を大事にしてリスペクトし合い(FLAT)、一人一人が笑顔(FUN)になる社会。そういう社会でありたくはないだろうか。私はそういう社会に住みたい。
だから私は、個人の生き様としてFREE FLAT FUNを掲げるし、社会のあるべき姿としてのFREE FLAT FUNを目指していこうと考え、それをタイトルにした本を書いた。まだまだ社会はFREEでもなく、FLATもまだら模様で、FUNな人もいれば憂鬱な人もいる。私はこの社会に生きる人、一人一人が常識にとらわれず自分の思いに従い、お互いがお互いをリスペクトする社会をどうしても作りたい。そのために私は行動するし、これからも社会に対し働きかけをしていきたいと考えている。
著者プロフィール:伊藤羊一
Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長、株式会社ウェイウェイ代表取締役
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月よりヤフー。現在Zアカデミア学長として次世代リーダー開発を行うほか社外でもリーダー開発を行う。2021年4月武蔵野大学アントレプレナーシップ学部を開設、学部長就任。代表著作「1分で話せ」。
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