シルバー人材がゾンビに? 門真市が挑んだ映画製作の裏側を聞く:タイムアウト東京のオススメ
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大阪府門真市の市民、延べ1200人以上が参加するゾンビ映画『門真市ゾンビ人材センター』が、2021年8月13日に初上映されました。「SDGsをテーマとしたゾンビ映画」である本作は、市のシルバー人材センターと地元の国際映画祭運営チームがタッグを組んで製作されました。「なぜ、高齢者をゾンビにしたのか?」という疑問や誕生の裏側について、監督に話を伺いました。
本作の製作指揮をとったのは、『門真国際映画祭』を運営するNPO法人の門真フィルムコミッションです。2019年にセンター側から「設立40周年を記念した映画を作りたい」という相談を受けたことが、全ての始まりでした。
依頼をもとに提案した企画は、せりふや細かな演技がなくとも多くの人が参加できる「ゾンビ映画」。日本で初めてゾンビ映画が公開されたのは1979年で、門真市シルバー人材センターと国内ゾンビブームが「ほぼ同い年」だったことも、提案の背景にあったといいます。
しかしシルバー人材センターの理事会からは、グロテスクなイメージを懸念する声もありました。それに対して誰もが安心して映画を見られるよう「SDGsをテーマに加えてみては」というフィードバックがあったそうです。
映画の監督と脚本、編集を担当したのは、発案者でもある奈須崇(門真フィルムコミッション理事長)。環境汚染やジェンダー、貧富格差といった社会問題を解決するための「持続可能な開発目標」をゾンビ映画にどう絡めるべきか、頭を悩ませたといいます。
「ゾンビ映画とSDGsの相性の悪さがネックでした。シルバー人材センターからの意見を受け、SDGsの17の目標の後に「ゾンビ」と書き足してみたりしたんです。「貧困をなくそう」とゾンビ。「全ての人に健康と福祉を」とゾンビ。「ジェンダー平等を実現しよう」とゾンビ……。恐らく自分はSDGsとゾンビの組み合わせを世界で一番多く考えた人なのでは、という自負があります」
考えた末に到達したのが、SDGs全体理念として掲げられている「誰一人取り残さない」というテーマを映画に組み込むことでした。「物語の中でも撮影現場でも、誰一人取り残さず焦点を当てる」という方向性が決まってからは、迷うことなく突き進むことができたそうです。
撮影されたフィルムは奈須自身による編集を経て、約50分の作品へと仕上がりました。完成した『門真市ゾンビ人材センター』は、関係者試写会でも好評だったといいます。本来なら2020年6月に上映会を予定していましたが、コロナ禍によって延期。「シルバー夏フェス」という名称で、8月13日(13日の金曜日)に初上映を行いました。
鑑賞者や実際にゾンビとして参加した出演者からは、とにかく感動の声が大きかったといいます。涙目になって「良かった」と感想を述べる人、「冥土のいい土産になった」と言う出演者のほか、「映画を即興で作ったとは信じられない」という声が、奈須の元へ届いたといいます。
全国のメディアで取り上げられたことから、上映後の現在もなお、本作の上映日についての問い合わせが、多く寄せられています。那須は反響について「シルバーさんのゾンビが日本を明るくしているなぁ、と感慨深い」と感想を述べました。
「多くの方にこの映画をご覧いただいて、高齢者の方々のゾンビを見て元気になってもらいたいと考えています。現在、この映画を上映してくださる映画館や企業様を大募集しております」
映画『門真市ゾンビ人材センター』は、10月7日(木)から開催される「門真国際映画祭2021」で特別上映が行われるほか、オンラインでの上映も実施。会期中から2022年9月まで視聴できる予定です。
その他、「シルバー人材がゾンビに? 門真市が挑んだ映画製作の裏側を聞く」では、「即興撮影」という独自の手法でカメラを止めずに駆け抜けた製作の裏側などを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
著者プロフィール:タイムアウト東京 編集部
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