「45歳定年制」の是非から考える「人を活かす経営の新常識」:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
終身雇用は人を大切に育て活かせているのか? 制度疲労した日本型雇用を乗り越える提案は、10年前から看過され続けた。コロナ禍も相まって、全世代のキャリア自律がもはや待ったなしの必須課題に。いまこそ、「人を活かす経営の新常識」が求められる!
40代での「早い締め切り」が、キャリア自律への行動を促す
私自身、40歳で前職を自らフレックス定年をすることを決め、起業しました。リクルートという、入社時からキャリア自律を説かれる珍しい大企業なので参考にならないと思われる方も多いことでしょう。ただ、社風や育成手法は異なれども、いまやキャリア自律の重要性は一般化しつつあります。
同社では、20〜30代にかけて、OJTでも徹底的に自律意識を鍛えられました。この早い締め切りがあるからこそ、それまでに社外でも通用する一人前の力をつけようと、貪欲に働き学びます。上司との面談でも常に自分自身が何をしたいか、どうなりたいかと問われ続け、自分のキャリアを考え、社内公募制で希望する仕事やポストに手を挙げ、チャレンジが奨励されます。私自身、社外でも通用するプロを目指すべく、キャリアの節目ではビジネススクールにも通いました。厳しくはありましたが、そのおかげで起業して10年以上なんとかやってこられたと感謝しています。
ですから、社員にキャリア自律を促す改革の意義はあると考えており、経営者となった現在は自社メンバーにも「終身雇用は保証しないけど、外でも通用する力は必ずつけさせる」と約束しています。
企業は社員をプロフェッショナルに育て上げ、社員は自ら学び社会と組織に貢献し続ける
一方で今回の45歳定年制の提案に対し、現役の中高年世代が後出しだと不満を抱く気持ちも分かります。終身雇用と年功賃金を信じ、若い時の低い賃金や重労働にも耐え、滅私奉公してきた見返りがこれかとの嘆きは当然でしょう。しかも、欧米に比べ転職市場が未発達で、特に中高年になると求人が激減する日本においては、いきなり45歳定年を突きつけられるのは酷すぎます。
本来、キャリア自律の仕組みの導入は、入社時からやるべきです。当初から、この会社は社員をプロフェッショナルに育てる場だと納得していれば、不満も生じないはずです。
いまや、働く一人一人のキャリア自律は、全世代に共通する喫緊の課題です。激しい環境変化は人の意識の変化を待ってはくれず、コロナ禍が時計の針を10倍速にも早めています。そこで、「いま45歳定年制が始まれば、自分はどうするか」全ての世代が覚悟を持つことです。不安も高まるでしょうが、心を落ち着けるためにも、冷静に今後の20〜30年、どうキャリアを重ねるか、そのためにはいかに働き学ぶか、自問してみましょう。働き直しや学びには、決して遅すぎる「定年」はないのです。
社員の働きがいと成長を育み、キャリア自律を目指す経営について詳しく知りたい方は、拙著「『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月発行)」をぜひご参照ください。
著者プロフィール:前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)
人材育成の専門家集団FeelWorksグループ創業者であり、人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、400社以上を支援している。独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などを提供。多様な働く人たちの本音に通じ、四半世紀にわたる現場研究に基づいた研修プログラムで、現場を預かるリーダー達から圧倒的支持を集めている。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人企業研究会 研究協力委員サポーター、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。連載やコメンテーター、講演活動も多数。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)など多数。最新刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)
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