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俳優・寺田農の朗読の旅。漢文調の明晰な文章が持ち味、森鴎外の「最後の一句」を読むITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

声に出して本を読むという“朗読”は、読み手にとっても聞き手にとっても耳に入りやすく頭に残りやすいもの。今回は1961年から60年にわたって俳優として活躍している名優 寺田農氏が森鴎外の短編小説「最後の一句」を朗読。森鴎外の人生や作品について語る。

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 翌日、白洲に連れ出された桂屋の子どもたち。奉行のきびしい尋問にも負けず、14歳のいちは凛として父の助命を願いでた。そして最後に、いちは西町奉行にある一言を発する。その一言が、その場にいた役人一同の胸に強く突き刺さるのだった……。

 寺田氏は、14歳のいちや12歳のまつ、大人の男性である西町奉行や門番ら、さまざまな年代の男女が登場する短編を、落ち着いたトーンで朗読。

 江戸時代の奉行所のお白洲、そこにひざまづく子どもたちと、彼らを書院から見下ろす奉行。その光景が目に浮かぶような朗読に、オンラインで視聴している参加者も聞き入っていた。

プレゼンにも通じる、人前で何かを伝える際の重要ポイント

 朗読後に行われた質問コーナーでは、人を引き込む寺田氏の朗読について、大学で教員をしているという参加者から質問が寄せられた。

 質問内容は、「ナレーションの時には外から俯瞰して客観的に読み、せりふの部分では登場人物に入り込んで演じるのでしょうか。教壇で講義をする際などに、学生にどのように伝えれば良いのか悩むことがあり、どのように朗読されているのか教えてください」というもの。

 寺田氏は、「朗読の際には客観性と、自分なりのイメージを持ちながら、それぞれの役の切り替えながら演じていくという感じですね。キャラクターごとに声音、音色を変えるようなことはせず、最初にキーを決めて、そのトーンを保ちながら読むのが、聞きやすい朗読のポイントです。また、講義などで人にものを伝える際には、その場の全員に伝えようとするのではなく、ある一人をターゲットとするのがいいですね。相手が理解するまでの間をとって、相手のリアクションを感じ取れたら、次の説明にうつる。そうすることで、人に伝わりやすい講義になりますよ」と回答した。

 2008年に東海大学文学部特任教授に就任し、約5年間、映画史入門、演劇入門などの科目を担当した寺田氏。自身の体験からのアドバイスは、プレゼンや講演などをする際に、全ての人に通じるもの。画面越しに多くの参加者がうなずいていた。

 現在、主演映画『信虎』が全国のTOHOシネマズ系列にて公開中の寺田氏。最後に「次にこの本を読んでほしい、この作家を紹介してほしい、など聞きたい話があれば、ぜひ教えてください」と述べて「朗読の旅」を終了した。

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