本に、オトナにしてもらった。〜人生の分岐点は、本屋さんにある。〜:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
本屋さんでは、本を選んでいるのではなく、本に選んでもらっている。その本に目がいくのは、「ちょっとそこ行くあなた、大丈夫ですか」と、本に声をかけてもらったから。あなたは気付いていますか。
シアトルの本屋さんで著者自身が朗読会をすることもあると聞いて、「僕は朗読が好きだから、自分の本を朗読してもいいし、ほかの人の本を朗読するのも楽しそうだな」と思いました。
本屋さんは、本を買うだけの場所ではありません。公民館的なコミュニティーの役割もあるのです。本屋を案内してくれた人が「ほら、今も朗読をやっていますよ」と言うので、見ると隅っこに3人います。著者が読んで、2人が聞いているのです。
本も1冊丸ごと読むのでなく、著者が読みたいところ、または聞き手が読んでほしいところを読めばいいのです。何百人と集めてする必要はありません。者と読者がいれば朗読会はできます。「むしろ聴衆2人の朗読会はオシャレだな」と感じたのです。
本は、つらいことのあった人の最後の駆け込み寺だ。
『面接の達人』の読者は、これから面接をする人でも、面接に通った人でもありません。僕は明確に読み手を考えて本を書いています。『面接の達人』の読者は、最終面接で「あなたと一緒に働いていきたい」と内々定のような言葉をもらい、ガッツポーズをして、親にも友達にも「通ったような気がする」と言ったのに、「今回は残念ながら……」という連絡が来た人です。
そもそも恋愛真っ盛りで、ラブラブ、ハッピーな人は本屋さんに来ません。その人はテーマパークや映画館に行っています。
本屋さんに来るのは、好きな彼女にフラれたり、つらいことがあったり、仕事でイヤなことがあったり、クビになったり、心の中に何かのせつなさを抱えている人です。そういう人たちが手にとるのは、元気いっぱいの本ではなく、「もう少し頑張ってみよう」「もう少し生きてみよう」と思えるような本です。
疲れていても、本にはその人を勇気づけて、心を癒やせる何かがあるのです。そういう人の最後の駆け込み寺が本屋さんです。
ギチギチに組まれた難しい文章は、元気な時はいいですが、ヘトヘトの時は読むのがしんどいです。ある高校生が、「私は今まで本を最後まで読んだことがありませんでした。中谷さんの本で初めて1冊の本を最後まで読みました」という手紙をくれました。旅館で働いている人で、もう1人、同じことを書いてくれた人がいました。
こういう人を大切にしたいのです。
僕は、やる気満々で伝えたいことを書いているわけではありません。本は、相談できる人、助けを求められる人がどこにもいない人の最後のよりどころです。その人のために、平易な文章で、共感、励まし、勇気、希望を与えられるものを用意したいのです。
著者プロフィール:中谷彰宏 作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。セミナー、ワークショップ、オンライン講座を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は『本に、オトナにしてもらった。』(かざひの文庫)など、1100冊を超す。
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