管理職のダメな話し方、5つのクセ――部下に話が伝わらないと嘆く前に:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
話し方のプロとして数多くのビジネスパーソンにレクチャーをする中で、「部下に話が伝わらない」という管理職の悩みをよく聞きく。どうすれば“伝わる”話し方を習得できるのか。
3、会議や商談はその場で話すことを考える
アナウンサー講師として、ビジネスパーソンにプレゼンでの話し方をレクチャーをすることがあります。企業に行って驚くのが、プレゼン資料はできているのにまったくしゃべる準備をしていない人がとても多いということです。
大手企業の管理職であるAさんも、その1人でした。Aさんの場合、部下がプレゼン資料を作るため、プレゼン直前になって、「これでお願いします」と資料を渡されることもあるといいます。
これでは、話し方の練習どころではありません。どんなに素晴らしい資料があっても、本番でボソボソと話すことになっては、“伝わる”プレゼンはできません。
プレゼン前には、タスクに「資料作成」を入れたら、必ず「話す準備」も追加してください。また、人前に立って伝えることの多い管理職は、プレゼンに限らず、日頃の商談でも、会議でも、話す準備をすることをぜひ心掛けてください。
4、真面目な表情で淡々と話す
財務の経歴が長いYさんの第一印象は、とにかく真面目なビジネスパーソンでした。話し方も丁寧で、一見、なんの問題もなさそうに見えます。しかし、過去のプレゼンの動画を見せてもらうと、すぐに課題が分かりました。
Yさんは真面目でストイックな性格が災いして、話し方に感情の起伏が表れないのです。
話している人に表情やジェスチャーがないと、聞く側は退屈してしまい、どんなに良いことを言っていても心に響きません。
日常の社内ミーティングや部下との会話でも、真面目な表情で淡々と話すYさんに対して、聞き手の感情が動くことは少ないでしょう。
部下に“伝わる”話し方をするためには、表情やトーンも意識してみてください。
5、話を聞くときはよく相づちを打つ
ある30代の起業家Sさんは、せっかちな性格で早口です。相手が話していても、食い気味に「はい、はい」と相づちを打ってしまいます。本人としては早く話を聞きたいという気持ちの表れなのですが、相手には伝わりません。
そんなSさんが、尊敬する人材会社の社長と話す機会をもらいました。しかし、楽しみな気持ちが強すぎるあまり、つい、いつものクセが出てしまいます。社長が話すたびに、かぶせるように「はい!」「それで?」と相づちを打ち、ついに、社長が「なぜ君は、人が話しているのを邪魔するんだ」と怒り出してしまいました。
相づちひとつで、仕事のチャンスも決まるのです。
社内でも、部下の話を聞くときに食い気味に相づちを打ったり、「それで?」と話を急かしたりするのは、逆効果です。また、相づちは適切でも、視線を合わせない人も多いので注意してください。
話し方を変えると人生観が変わった
最後に、話し方トレーニングを経て生き方まで変わった人を紹介します。先述の真面目な表情で淡々と話していたYさんです。
Yさんには言葉に感情を乗せるトレーニングをしてもらいました。あるレッスンでは料理を想像して、2パターンの「おいしい」を言ってもらいます。本当においしい料理を食べたときの「おいしい」と、まずい料理に対して言う「おいしい」では言い方がまったく違うはずです。ところが、Yさんはどちらも同じような棒読み。まったく感情がのっていません。
レッスンの風景を動画に撮り、見返しながら何度も練習します。「ベテラン役者になったつもりでお願いします!」とアドバイスをすると、少しずつ「おいしい」の言い方に違いが表れるようになっていきました。もともと真面目でストイックなYさんは自主的にトレーニングをこなし、ハイスピードで話し方が変わっていきました。そして声のトーンがよくなり、表情も豊かに。抑揚のついた話し方になりました。
さらに感情がオープンになったことで、ライフスタイルもガラリと変わったのです。子どもを学校や習い事へ送り迎えするようになったり、食べ物に興味を持ち、健康に過ごすことに目を向けたりするようになりました。
仕事が一番だったYさんの口から、「自分の人生を自由に生きてもいいんだと思えるようになりました」という言葉を聞いたときには驚きました。人生観が変わり、感情豊かになったYさんの話は、これまで以上に人を引きつけるはずです。
“伝わる”話し方や声は、一度身につけたら一生使える最強のスキルとなります。
本書では社長が話し方を変えることで社員とのコミュニケーションや会社が変わった事例とともに、話し方やプレゼンのトレーニング法も紹介しています。
著者プロフィール:樋田かおり(といだ かおり)
株式会社トークナビ代表取締役 アナウンサー
岐阜県生まれ。2008年、日本テレビ系列青森放送にアナウンサーとして入社。テレビ・ラジオの放送現場を経験した後、28歳で独立し、2015 年に「声で、未来を変える」をビジョンに起業。幼少期から人前で話をするのが大の苦手だった自身の経験から、“伝える力”向上に貢献したいと、アナウンサーを講師とするプレゼンやコミュニケーションの社員研修、経営者の話し方マンツーマンレッスン、企業の広報代行サービスなどを提供している。著書:「社長の伝え方には会社を変える力がある」 (青春出版社)、「人見知りアナウンサーに学ぶ ドキドキに負けない話し方」(文響社)
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