「高賃金化」会社の収益を最大化し、社員の給与をどう上げるか?:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
「高収益化」と「高賃金化」は、本来相反するものだが、解決する方法はある。
経営者と社員が共に「高収益と高給与の両立」を目指す仕組みづくりを
1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現するためには、経営者と社員が同じ価値観のもと、両者共に手を取りあって取り組むことが重要です。
そして、
経営者と社員の双方が高い目標を掲げ、その利益目標を達成したくなり、その目標を達成するための『能力アップ』と『行動』、『仕組みづくり』と『マネジメント』をしたくなる
という状態にしなければなりません。
そのために必要な仕組みはいくつかあるのですが、ここではキーとなる、最も重要な仕組みがあります。それは、「全社業績連動型報酬制度」です。「全社業績連動型報酬制度」とは次のようなものです。
・営業利益の一定割合を、一定期間ごとに全社員へ報酬として分配する。例えば、営業利益が500億円出たら、その10%(50億円)を全社員へ分配する。
・1人1時間当たりの付加価値生産額の向上分の一定割合を、一定期間ごとに全社員へ報酬として分配する。例えば、1人1時間当たりの付加価値生産額が5000円から1万円に上がったら、その差分(5000円)の10%を分配する。
※この場合、平均時給が500円、年間100万円ほど報酬が増えることになります。
・その他、「ストックオプション」「従業員持株制度」など
全社業績連動型報酬制度は、個人プレーではなく「チームプレー」を基本とし、個人責任ではなく「連帯責任」という考え方が基本となります。みんなで成果を出せば、みんなの報酬も上がり、みんなで頑張っても成果が出なければ、みんなの報酬も下がるのです。つまり全社業績連動型報酬は、「チームで価値づくりすることに対しての報酬」なのです。
この制度があることにより、以下のように仕組み上に明確な差が生まれるのです。
■「高い目標を掲げる」ほうが合理的
×低い目標を達成しても低い報酬
〇高い目標を掲げ、達成に近づけば、報酬も増える
■人を増やすより「成長する」ほうが合理的
×人を増やして、楽ではあるが、1人当たりの生産性は上げない
〇人や仕組みが成長しなければならないが、1人当たりの生産性は高まる
■「みんなに成功ノウハウを教える」ほうが合理的
×ノウハウを隠し10人中自分だけ成功:自分の評価は高いが、全体利益が出ないので報酬は少ない
〇ノウハウを共有し10人みんなが成功:自分の評価は普通だが、全体利益がたくさんあるので報酬が増える
■「的確にマネジメントする」ほうが合理的
×放置してもマネジメントしてもそこまで報酬は変わらない
〇放置は全体利益の損失につながる。的確にマネジメントし、1人当たり付加価値生鮮性を高める
よく、頑張れば報われる! ほかの人を助ければ報われる! マネージャーは自分の成果ではなく部下の成果をあげることが重要だ、といわれます。その言葉を体現するためには、会社の制度自体の変革も求められているのです。
上記は、経営者と社員の双方が高い目標を掲げ、その利益目標を達成したくなり、その目標を達成するための『能力アップ』と『行動』、『仕組みづくり』と『マネジメント』をしたくなるための1つ目の仕組みです。他にもまだまだありますが、根底となるのはこの考え方です。リーダーの皆さまは、これそのものとは言いませんが、ぜひ経営者と社員そしてお客さまがALL-WINの仕組みを考えてみてください。
誇りある働きかた、生きかたを目指して
私が目指しているのは、「働きやすさ」と「働きがい」の両方が追求・実現された世界です。毎日、毎時間、全ての働く時間が誰かのためになっていることが、最も重要な価値観として大切にされる社会です。今以上にもっと誰かの役に立つ、もっと誰かの困りごとを解決する。それができていくと、自分自身に対して「かっこいい働きかた、生きかたをしているな」と誇りを持てるようになるはずです。
そんな考えかた、仕組みが社会全体に広がっていき、私たちの子ども世代も、将来そんな社会の中で働けるようになれば、「お父さん、お母さんたちが、頑張ってこんな社会をつくってくれたお陰だ」と、私たちを誇りに思ってくれるのではないでしょうか。
これを読んでいるあなたも、ぜひ一緒に、そんな流れを生み出していきませんか? そして、今の子どもたち世代に誇りに思われるような、「誇りある働きかた、生きかた」を一緒に実現しましょう!
著者プロフィール:田尻望
株式会社カクシン 代表取締役CEO
京都市出身。大阪大学基礎工学部情報科学科卒業後、株式会社キーエンスでコンサルティングエンジニアとして重要顧客担当、また販売促進技術、海外販売促進技術に従事。その後研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円〜4000億円規模の企業で、経営戦略コンサルティング実施、月1億円、年10憶円の利益改善などを実現している。社会変化に適応した企業の長期的発展を目指す。著書に、発刊10万部を突破した「付加価値のつくりかた」(かんき出版)のほか、「再現性の塊」(かんき出版)、「高賃金化」(クロスメディアパブリッシング)「『キーエンス思考』×ChatGPT時代の付加価値仕事術」(日経BP)「構造が成果を創る」(中央経済社)がある。
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