企業成長に欠かせない広報の「伝える力」とは:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
広報の目的は、企業や組織の情報を正しくステークホルダーに伝える事です。自社の製品、サービスの認知を高めると同時に、会社そのものの社会における価値を知ってもらうために、広報PRは大きな役割を果たします。
では信頼関係を築くために、具体的には何をすればいいのでしょうか。
比較的手ごろにできるのは、記者との情報交換時に、あるいは取材後、時間に余裕がある時に、予め項目を決めて質問して情報収集することです。
例えば、以下のような内容です。
【企業・経営分野】
- 企業のイメージは?
- 経営トップや役員陣を知っているか、また関心があるか
- 経営トップはどのようなイメージか
- 経営トップの情報は十分に届いているか
- 経営トップの取材頻度は十分か
- 経営トップに期待することは?
- 経営方針やビジョンが明確に伝わっているか
【広報分野】
- 知りたい情報が十分届いているか
- 情報発信頻度は十分か
- 企業情報は、正確・迅速に開示し広報を信頼しているか
- 日々の取材対応は迅速でフォローが行き届いているか
- 日々の広報とのコミュニケーション活動に満足しているか など
激変するメディア環境にも自社を報道させるチャンスがある!
コロナ禍を経て、情報提供先であるメディア環境も激変しています。記者も出社して仕事をする行動パターンから、リモートワークが主体となり、取材もオンラインで十分対応ができるようになりました。
また、働き方改革により、より効率的に取材を進めるために編集部に出社する必要もなく、自宅から取材先に出向く行動も増えています。広報パーソンがよく口にしますが、「記者と連絡がとれない」「編集部に電話しても記者がいない」など情報提供先がつかまらない環境になりつつあります。
また、これまで主体であった紙やTV媒体の影響力が弱まり、ネット媒体がより身近な存在になりつつあります。
変化の激しいメディア環境では、より広く深く媒体を知ることが重要となります。先ずは、意識している、あるいは重要と思える媒体のリサーチが必要でしょう。定点的に記事を読むことで、情報の傾向を知ることができます。これにより関心分野やテーマが想定でき、効果的な情報提供にも近づきます。記者とのコンタクトも先ずは編集部に電話をしてみることから始まり、記者自身もSNSで発信している人も増えているので、ここからのコンタクトも効果的な方法です。先ずは顧客=記者を知ることが基本です。
後は、プレスリリースの発信や個別取材などを通じて的確な情報発信を行います。ここで重要なのは等身大の正しい情報提供に徹することです。最近はプレスリリースの配信サービスにより、宣伝色の強い情報や自社絶賛の脚色過多なプレスリリースが増えています。しかし「盛った情報」は、記者にはすぐに見抜かれます。ここは基本に返って「正直さ」を基本とすること。その方がメディアには新鮮に映るはずです。
著者プロフィール:三上毅一(みかみきいち)
ベンチャー広報 CKO (Chief Knowledge Officer)最高知識責任者、シニアPRコンサルタント・マネージャー、広報・PRトレーナー、ゼロイチ広報 代表コンサル、学校法人事業構想大学院大学ゲスト講師(青山忠靖特任教授ゼミ)
大学時代から広報PR業界に入り、キャリアは40年。これまで上場企業から中堅・ベンチャー企業までの広報コンサルティングを手掛け、これまでに500社以上の経験を持つ。また民間企業のほかにも自治体、大学、政党、宗教法人、博覧会事務局と、あらゆる組織広報の経験を持つ。加えて“攻めの広報”“守りの広報”の経験も豊富で戦略策定から広報担当者の教育・育成まで多岐にわたり経験。
現在は、BtoBからBtoC企業を幅広く担当した経験とキャリアで培った豊富なマスコミ人脈を活かした、広報PRの指南役としてマネジメントも担当。また生涯現役を掲げ、自身でもクライアントを持ち広報業務も行っている。ゼロイチ広報では、年間のべ200名の広報パーソンに向けた個別コンサルや「広報いろは勉強会」の講師を担当。
“広報の現場を熟知した”ベテラン広報パーソン。著書に『広報のプロが教えるメディアのトリセツ―取材獲得への5ステップ』(中央経済社)
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