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なぜ今リーダーにとって「経営戦略の浸透」が重要なのかビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

日本企業は一刻も早く課題に本腰を入れ、「稼ぐ力」を高めなければならない。ではどうすれば企業は「稼ぐ力」を上げることができるのだろうか。

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経営戦略をカスケードダウンせよ

 では経営戦略を現場まで浸透させるために、企業は何に取組んでいけば良いのでしょうか?

 その解決策が、今回紹介する「カスケードダウン=経営戦略の浸透策」という企業変革の手法です。耳慣れない用語ですが、カスケード(cascade)とは、英語で階段状に連なる小さな滝を意味する言葉です。ビジネスにおけるカスケードダウンでは、組織の上位層から下位層まで、経営戦略を浸透させ、個々の社員の職責や業務の範囲までタスクを細分化していきます。

目標管理制度とカスケードダウンとの違い

 経営戦略の細分化というと、目標管理制度で経営戦略をブレイクダウンし、個人ごとの目標を設定し管理する方法と同じように見えますが、カスケードダウンと目標管理には決定的な違いが2つあります。

1、経営戦略を断片情報ではなくストーリーでつなぐ

 通常、経営戦略は、経営層や経営企画担当がさまざまなデータや情報をもとに何時間にも及ぶ議論をしながら決定していきます。その議論の中で、バラバラだった「点」の情報が「原因と結果」「目的と手段」といった「線」でつながったストーリーとして積み上げられていきます。ストーリーを共有しているメンバーは経営戦略を他人事にはしません。

 ところが、多くの目標管理制度を見ると、ミドルマネジメント層以下の目標設定において、経営層が交わした議論や背景にある情報が共有されることはありません。きれいにまとめられた資料とともに、戦略テーマ・課題・目標値などの断片的な「点」の情報だけが現場に発信されるだけになってしまうのです。人は断片的な情報よりもストーリーを共有する方が、物事を理解しやすいもの。腹落ち感も高まります。自分自身が経営戦略の当事者であることを認識し、自分ごと化します。

2、抽象度の高い経営戦略を細分化によって具体化させる

 事業がいくつかに分かれ、広範囲にわたる企業の場合、どうしても経営戦略は抽象的かつ漠然としたものになります。ところが多くの目標管理はそれを細分化し具体化していく仕組みになっていないのです。その結果、社員からは「経営戦略はあるが具体策がない」といって浸透していかないのです。カスケードダウンはそういった抽象的かつ漠然とした経営戦略を細分化というプロセスの中で、現実感のある具体的な取り組みにつなげていきます。

経営戦略の浸透はすべてのリーダーの最優先課題

 日本経済の先行きの不透明感が増す中、リーダーにとって「稼ぐ力」の向上は最優先で取組まなければならない重要課題です。その課題解決に向けて『カスケードダウン――人と組織が自ら動く経営戦略の浸透策』では、具体的な解決手法を事例とともに紹介しています。

 「経営戦略を策定したが結果が出ない」「改革が一向に進まない」「人的資本経営に取組むも成果が出ない」そうした悩みを抱えるリーダーの皆さんには、ぜひ本書を参考にカスケードダウンを実践していただければと思います。

著者プロフィール:石原正博

株式会社センターボード 代表取締役

1969年東京都生まれ。1992年学習院大学法学部を卒業後、大手信託銀行、組織改革コンサル会社を経て、2011年株式会社センターボードを設立。

著書『会社が生まれ変わる「全体最適」マネジメント』 日本経済新聞出版社2016年3月1日、『「組織の壁」の壊し方 「働き方だけ改革」では会社は変わらない』日本経済新聞出版社 2019年5月24日、『「カスケードダウン」人と組織が自ら動く経営戦略の浸透策』ダイヤモンド社 2024年3月6日


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