日本で生まれたBA方法論 RDRA:ビジネスとITを繋ぐビジネスアナリシスを知ろう!(2/2 ページ)
「網羅的で整合した要件定義を素早く行う、システムの可視化手法」RDRAとは。
RDRAの活用シーン
「要件定義」という言葉から、新規のITシステムを構築する際の要件定義に使うものというイメージを持ったかもしれませんが、冒頭で使った言葉「可視化手法」がRDRAの本質です。新規の要件定義以外にも、長期の維持期間を経て有識者がいなくなり、下記のような課題をもった既存のシステムに対して、設計情報や断片的な暗黙知を見える化し、それぞれの関係をたどっていくことで、本来の要件を可視化(リバースモデリング)することができます。
【既存システムの課題の例】
- システムの全体を理解する人がいなくなり、保守開発に多大な費用が必要となったり、希望する改造が希望の納期で実施できない
- 老朽化したシステムを業務パッケージなども利用して再構築したいが、どのように機能分割すれば可能なのか分からない
筆者の会社でも、このリバースモデリングにより、システム再構築の方針策定や見積もりに役に立った事例や、開発者でもシステムの全体像や背景業務が見えるようになり、仕様変更の際に顧客と業務の言葉で会話するようになったなどの事例があります。
生成AIとの連動
これまでのRDRAの説明はいかがでしたか? 良いところがあるなと感じるものの、下記はとても難しそうだと感じた人もいるのではと思います。
(1)何もないところからRDRAのモデルを作成(0:ゼロ→1:イチの作業)すること
(2)RDRAのモデルがあったとして、それを業務側が理解すること
近年の生成AI技術の進歩は素晴らしいものがあり、バリューソース社ではRDRAと生成AIの連携についても研究し進歩しています。
1、RDRAZeroOneツール(0:ゼロから1:イチを生み出すツール)
「システム化対象の背景と業務の概要」を入力にして、RDRAレイヤに沿って生成AIに案を提示してもらい、段階ごとに意図があっているかを確認しながら、要件の「たたき台」を作成することができます。
「たたき台」としているのは、いかに生成AIが学習したとしても、正確な要件を自動的に作成することは困難ですし、仮にできたとしても、成果と学習コストのバランスがとれないので、あくまでもステークホルダーが議論し、合意する要件を固めていくために、気づきを与える「たたき台」を作るということがRDRAZeroOneツールのコンセプトです。
(1)システム化対象の背景と業務の概要を入力
(2)3段階でLLMを実行し要件の方向性を持たせる
- システム化対象のビジネス全体像を明らかにする
- 業務を仕事に分解し、管理する情報と状態を洗い出す
- RDRA要素(UC、情報、状態〜)を明らかにする
(3)LLMで作成した要件をRDRAGraphで確認
(4)(Spreadsheet)で要件を定義
(5)RDRA分析で不整合を検査
(6)RDRA分析からRDRAGraphで確認
2、GraphツールでのChatBot
RDRAのモデル情報をもとに、その全体や、関心があるところを中心にした図を自由に表現してくれるGraphツールが提供されていますが、表示されている図の説明をしてもらったり、何か変更を行う時の影響についての説明を生成AIを使って回答してくれます。
RDRAを学びたいときは
上記の説明を読んで、もう少し詳しく学びたいと思った場合は以下を参照ください。
【書籍】
【勉強会】
- RDRAを学びあう有志の勉強会RDRA MeetUp - connpass
【参考リンク】
・RDRA
著者プロフィール:濱井和夫(はまい かずお)
- NTTコムウェア(株)コーポレート革新本部 技術革新統括部 プロジェクトマネジメント部門、 ビジネストランスフォーメーション事業本部 事業企画部 QM部門、エンタープライズソリューション事業本部 事業企画部 PJ支援部門 兼務 統括課長,アセッサーPMOとしてプロジェクトの適正運営支援、及びPM育成、及び上流工程品質向上活動に従事。
- IIBA日本支部 監事:2017年からIIBA日本支部理事(教育担当、総務担当)。BABOKの日本での普及活動に従事。Kindle版「よくわかるビジネスアナリシス」(共著)、BABOKガイド アジャイル拡張版v2(翻訳)、ビジネスデータアナリティクス・ガイド(翻訳)、ビジネスアナリシス標準(翻訳)、プロダクトオーナーシップ概論(翻訳)
- その他:Kindle版「アジャイル品質パターン「QA to AQ」 伝統的な品質保証からアジャイル品質への変革(CodeZine Digital First)」(翻訳)
- SE4BS推進メンバー
- 匠Method User Group幹事グループメンバー
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