睡眠の質をあげることがうつリスク削減&生産性向上につながる――睡眠を改善するための超熟睡トレーニング:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
日本人の多くが抱える睡眠不調の問題。健康リスク、うつリスクを高める睡眠不調を自力で改善する方法がある。それが睡眠コーチの角谷リョウさんが提唱する「超熟睡トレーニング」だ。
不眠症解消のために行うべき改善項目
日本人の睡眠不調で「いびき&睡眠時無呼吸」の次に問題となっているのが、「不眠症」で、日本人の30%が不眠症レベルといわれている。不眠症には、「入眠障害」「早朝覚醒」「中途覚醒」「熟眠障害」の4つのタイプがある。
不眠症で最大の問題は「うつ」リスクの増加といえる。不眠症の患者は睡眠状態がいい人に比べて40倍のうつリスクを抱えている。さらに、不眠症は仕事への悪影響が大きい。また、一般的に人は無意識に睡眠不調の人に近寄りたくなくなるといわれ、不眠症患者は周囲との人間関係が悪化しやすくなる。特に、リーダーポジションにある人が睡眠不調となると、プロジェクトにも悪影響が出やすいので、改善が必要といえる。
「不眠症レベルの7割の人が、自分が睡眠不調だという自覚がないことも問題です。不眠スコアとうつスコアは比例していて相関関係があります。うつの一番の要因が不眠なので、不眠レベルが上がるとうつレベルも上がっていきます。睡眠改善して不眠症を解消することが重要です」(角谷氏)
海外では、不眠で病院にいくと「睡眠衛生(環境)の改善指導」、「認知行動療法」、「薬物療法」などが受けられる。さらにはアロマ療法や読書療法なども充実している。しかし、日本で病院にかかった場合、これらの指導はほとんど受けられず、薬物治療となってしまう。
日本ではどの科でも簡単に強い睡眠薬を処方できるため、睡眠薬を処方されることが多い。睡眠薬を使えば眠れるようにはなるが、常用するようになった場合、かなり計画的にやめないと以前より症状が悪化する反跳性不眠が起きてしまうので注意が必要となる。
では、病院や薬に頼らずに不眠症を自力で改善するには、どうすればよいのだろうか。不眠症改善の基本は「睡眠衛生(環境)」にある。睡眠環境を改善する場合、まず以下の10項目から改善するのがいいだろう。
効果の高い睡眠環境の改善 ベスト10
1、照明の明るさを下げる。
2、照明の色味を暖色系にする。
3、広めのマットレスで寝る。
4、遮光カーテンを使用する。
5、外の音を防ぐ。
6、高さの合った枕を見つける。
7、ちょうど良い湿度を保つ。1年中50%(40〜60%)と覚えておこう。
8、なかなか寝付けない夜は睡眠用ブレンド、ラベンダー木の香りなど、アロマも効果的。
9、スマホの常時点灯や光る時計を止めるなど、電化製品の光・音対策をしよう。
10、パジャマを着ることで、寝つきにかかる時間が短縮された例もある。
睡眠環境改善の次にやるべきなのが「認知行動療法」になる。これは認知(考え方)を変えて、その結果、行動を変えて改善していくという方法になる。
例えば、不眠で眠れない場合、体を休めようと休息する人が多いが、これは誤りとなる。人間は覚醒しないと眠れないので、眠れないなら起きて活動する必要があるのだ。このように、認知を変えて眠れるように改善することが認知行動療法となる。認知行動療法と薬物療法を比較すると、薬物療法(睡眠薬)と同様の効果がある。
睡眠は費用対効果の最も高い健康施策
角谷氏はもともとトレーナーをしていたが、運動・食事・睡眠の中で睡眠がもっとも改善効果が高いという理由で睡眠に特化した睡眠コーチに転身したという。人間の体を改善する場合、まずきちんと睡眠をとる、それから食事を改善し、その後に運動をするというコンディションピラミッドが重要になる。
「個人で睡眠を改善することはとても意味がありますが、会社やチームで取り入れるとさらに効果が高くなります。会社で社員の睡眠改善に取り組んだ場合、うつ・うつ予備軍の改善効果が圧倒的に高いのです。会社からのメンタルケアは望まない社員が多いですが、睡眠改善を希望する社員はとても多いです。社員が望んで参加してくれるので圧倒的に高い改善効果が出せるので、ぜひ会社やチームで睡眠改善を取り入れてみてください」(角谷氏)
角谷氏は睡眠改善がもたらす効果について話し、講演を終えた。うつリスクを減らし、生産性をあげる睡眠改善、取り組むべき価値がある施策といえるだろう。
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