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キーエンス出身CEOが語るシン・マーケットイン型付加価値組織への転換方法ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

ファクトリー・オートメーション(FA)の総合メーカーとして、また高い利益率を誇り、高年収企業としても知られるキーエンス。顧客のニーズを取り込んだ多くの世界初・業界初の製品を世に送り出しているキーエンスが付加価値を生み出している理由を、キーエンス出身のカクシンCEOの田尻望氏が語る。

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特長ではなく「利点」を語る営業手法

 キーエンスの営業の特徴の一つは、製品の特長を語るのではなく、その製品が顧客企業にもたらす利点を語り、顧客の欲しい引き出すところだ。

 「特長と利点では、主語が違います。特長の主語は売り手ですが、利点の主語はお客様です。その製品を導入することでどんな利点があり、プラスの変化があるのか。『この製品を導入することで1人10時間の業務時間削減になります。社員数が200人なので全体で2000時間削減され、従業員1人分の人件費の削減、年間500〜600万円くらいのコスト削減につながります』こういったふうに、利点を人軸、時間軸など2つの軸を増やし、面にして語ることで、顧客企業にもその製品の利点が価値として伝わります」(田尻氏)

 こういった製品の特長を深く理解することで、多数の要素を軸に製品の利点を語ることができるようになる。顧客企業が変われば、その製品がもたらす利点・価値も変わってくる。製品理解には終わりがなく、多軸からの理解が必要となる。だからこそ、自社製品や顧客企業についての理解を深めることで競合企業に勝てるのだと、田尻氏は言う。

 キーエンスに学んだシン・マーケットイン戦略では、顧客企業の御用聞きをしながらも価値を向上させる方法をさまざまな形で見せてくれる。それが、3000人超という少ない社員数ながらも、売り上げを伸ばし続ける秘訣なのだ。利点価値を訴求する力を体系化し、1対nで実現できる仕組みを持っていることが強みと言えるだろう。

 「利点とはお客様の変化点です。その企業を理解して、ビジネスモデル上コストが下がるのか、利益が上がるのか、生産性が上がるのか、CSRが向上するのか、リスクが下がるのか、最終製品の付加価値が上がるのか、そういった企業の求める変化がどこにあるのかを個別に計算しておくことが重要です。キーエンスのようなシン・マーケットイン型の企業では、それができているのです」(田尻氏)

生成AIが切り開く新たな営業スタイル

 このような高度な営業活動を全社員が実践するには、相当な能力と準備が必要となる。そこで今、注目されているのが生成AIの活用だ。

 田尻氏のカクシンでは、生成AIを使った事前戦略・戦術・戦闘レポートの作成や、AIアバターによる商談ロールプレイングを開発。「生成AIで作成した戦術書により、営業担当者は顧客の核心的なニーズを事前に把握し、より精度の高い提案ができるようになっています」

まとめ:最小の資本と人で最大の付加価値を

 キーエンスの経営理念「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」。この理念を体現する仕組みが、3000人という少数精鋭で1兆円超の売上を実現する原動力となっている。

 シン・マーケットイン型の組織への転換は、単なる営業手法の変更ではない。顧客の潜在ニーズを掘り起こし、それを数値化して価値を訴求し、全社員がその価値を語れる組織文化の構築なのだ。そして今、生成AIがその実現を加速させている。

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