カジノ業界で経験を積んだ医療CIO
いばらの道を歩んだ、がんセンターのIT構築【前編】(2/2 ページ)
ノーと言わず、成し遂げることがネバダがんセンターの精神
ネバダがんセンターのロビーに入ると、アーティストのデール・チフリー氏の手による華やかな吹きガラスのシャンデリアの輝きに包まれる。受付係はミネラルウォーターのボトルを渡してくれる。「常温のものと冷えたものとどちらがよろしいですか」
「ホスピタリティ(心のこもったもてなし)が肝心だ」とフェアクロース氏。「われわれは普通の病院とは違う。お客様、つまり患者に心から敬意を払い、それを形にしている。ここではすべてが、彼らに王様や女王様の気分になってもらえるように作られている」
フェアクロース氏は広々とした日当たりの良い部屋に案内してくれた。そこでは、床から天井まである窓から光がさんさんと降り注ぎ、遠くにラスベガス大通り(通称「ストリップ」)が見渡せる。
「素晴らしい眺めを楽しんでもらえるようにした」(同氏)
患者たちが座り心地のよさそうなイスにもたれて点滴を受けながら、ヘッドフォンを付けて自分専用のモニタでケーブルTV(CATV)を観ている。その横では、別の患者たちがやはり点滴を受けながら、小さなプライベートオフィスでノートPCを使っている。
ここは同センターの点滴室で、患者に化学療法を施している。1週間にわたって毎日8時間、ここで過ごす患者もいる。
「できるだけ快適に治療を受けられるようにしている」と臨床がん研究部門の看護師長、スーザン・カラミコ氏は語る。
それこそがネバダがんセンター全体の理念のようだ。患者が本を借りられる図書館もある。流れ落ちる水をキャンドル型ライトが照らすメディテーションルーム(瞑想室)も設けられている。ギフトショップではかつらや、「Cancer sucks」(くたばれ、がん)というロゴが入ったTシャツを売っている。研究施設も、西に広がるレッドロックキャニオンの深紅の岩山が連なる風景が眺められるようになっている。
「ネバダならではの施設と言える」とフェアクロース氏。「ここでは、誰もノーと言わない。どんなことでも成し遂げられると考えている。壁にぶつかることがあったとしても『それを実現する方法を見つけ出そう』というのが合言葉だ」
ネバダがんセンターは、02年にヘザー・ヘイ・ミュレン氏によって非営利機関として設立された。同氏はメリルリンチの消費財担当主席アナリストを務めていたとき、ラスベガスのとある病院でボランティア活動を行い、米国で最も急成長中の同市に、適当ながん医療センターがないことを知ってショックを受けた。
「『がんの治療が必要になったら、マッカラン空港に行くように言われた』というジョークがあった」とフェアクロース氏は振り返る。
ミュレン氏は仕事を辞め、カジノ大手MGMミラージュの社長だった夫のジムとともに、がん医療センターの設立、運営のための資金調達を始めた。これまでに調達された資金は総額1億7500万ドルを超えている。内訳は、民間の寄付が1億2500万ドル強、銀行団の信用状付きの地方債の発行と、連邦政府の助成金が5000万ドル強となっている。
ネバダがんセンターの新施設の建設は、03年に開始された。建設地は、ハワード・ヒューズとラウズが寄贈したラスベガスの高級住宅地区サマーリンの一画だ。ベラージオなど、ラスベガス・ストリップ沿いの巨大リゾートホテルの多くを手掛けたマーネル・コラオ・アソシエイツが、4階建て、総床面積約1万3200平方メートルのこの医療・研究施設の設計を担当した。このプロジェクトには約5200万ドルが投じられた。
「われわれはがんを治すためにここにいる」(フェアクロース氏)
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