セキュリティリーダーの視座
ビジネスもセキュリティも「数字で示すしかない」 - JERA CIO兼CISO 行徳セルソ氏(1/2 ページ)
JERAでCIO兼CISOを務める行徳セルソ氏は、ブラジルの建設会社でキャリアを始め、銀行のIT部門、アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)、東芝の米国半導体部門、日産自動車と、国も業界も異なる環境でITと経営に向き合ってきた。国籍も仕事のやり方も異なる組織で、共通言語になったのが数字だったという。
デジタル投資も、サイバーセキュリティも、同じ物差しで測るのが行徳氏の考え方だ。技術そのものではなく、事業への貢献として価値をどう示すのか。そのヒントを探る。
行徳 セルソ(GUIOTOKO Celso)
――株式会社JERA 常務執行役員 CIO兼CISO
サンパウロの建設会社でプロジェクトマネジメントに従事した後、銀行のIT部門へ。アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)ではサンパウロ、シカゴ、東京で経験を積み、東芝の米国半導体部門、i2 Technologiesを経て日産自動車へ。約15年在籍し、ルノー・日産のCIOとして両社のグローバルな情報システム部門を率いた。JERAにはアドバイザーとして参画し、その後現職。
ブラジルの建設会社から、銀行のIT部門へ
――これまでのご経歴について大学時代から教えてください。
行徳氏: ブラジルのサンパウロで大学に通い、土木建築と会計学科の両方を専攻しました。理系と文系の両方ですね。卒業後、ブラジルの中規模建設会社に入って、プロジェクトマネジメントを担当しました。その後、ブラジル国内で銀行に転職します。
ただ、実はそのきっかけはブラジルのIBMの中途採用試験を受けたことなんです。後から別の人に聞いた話ですが、IBMの選考は、5,000人の応募の中から最終選考に残ったのが25人ぐらいという狭き門で、私はそこに残ったようです。
――IBMの採用試験が、どう銀行につながるのでしょうか。
行徳氏: 私は何のポジションなのかをあまり気にしていなくて、採用プロセスの最後に聞かれたときも、技術的な領域が好みだという話をしました。しかし、IBMが求めていたポジションはマーケティングの仕事でした。それでIBMは結局、ご縁がありませんでした。
ところが、ちょうど同じタイミングで、おそらくブラジルのIBMにとって大事なお客さまだった銀行が、IT部門を強化したいと考えていて、IBMに候補者を紹介してもらえないかお願いしてきたようです。それで私に連絡が届き、面接をして、そのまま採用です。かなり特別なプロセスでしたね(笑)。
その結果、IBMと同じ研修を半年間、みっちり受けることになります。振り返ってみると、これが今の私の基礎となりました。この経験から、新卒に対してはしっかりした教育が必要だと、今でも思っているんですよ。
シカゴ、東京を経て日産自動車へ
――その後、アンダーセン コンサルティングに移られます。
行徳氏: サンパウロのオフィスで勤務をスタートし、その後、シカゴ、東京と移りました。80年代の後半でしたが、当時は4年ぐらいの教育プログラムがあって、毎年アメリカに研修に行くんです。シカゴの研修センターに世界中から人が集まって、みんな同じ教育を受けていました。
アンダーセン コンサルティングにはワンファームという概念、そしてグローバルという発想があったんです。東京では東芝の半導体を担当して、そこからアメリカの東芝の半導体部門に転職しました。その後、サプライチェーンがはやっていた時期に、東芝も使っていたソリューションを提供するi2 Technologiesに移りました。そこから日産自動車に移り、15年ほど在籍しました。日産自動車のCIOだけでなく、ルノーでもCIOと同じような立場で仕事をさせてもらいました。
――JERAには、どのような経緯で参画されたのでしょうか。
行徳氏: JERAから話を聞いたときにJERAが目指すミッションに共感したことがきっかけです。JERAは東京電力フュエル&パワーと中部電力の合弁会社で、これまでは国内を中心に事業を展開してきたものの、これからはグローバル展開していかなければいけない、ということでした。
また、それに合わせて、企業はデジタル化がしっかりできないと、マーケットでバリューを提供できなくなる。つまり、グローバル化とデジタル化がキーワードだったわけです。
最初はアドバイザーとして参画しましたが、その立場でできる範囲は限られています。では、やりたいことを実現するために、執行役員という形でやってみませんか、という話になりました。
グローバルで変わらないのが数字
――これまで多くの企業を経験されています。一番印象深い時代を教えてください。
行徳氏: 日産のカルロス・ゴーン氏の時代ですね。CEOとしてのリーダーシップや、経営の考え方、理念など、学ぶことは多くありました。
現場の声を吸い上げて、方針を明確にする。そのうえで、方針を確実に実現する組織を引っ張っていく。判断のスピードもすごく速かったですね。裏に何かあるタイプではなくて、AはAというはっきりした性格。意見はしっかり聞いたうえで、最終的には彼自身が決める。
ただ、なぜその判断をしたのかというロジックは明確に説明する。いろいろな国、いろいろなバックグラウンドの人がいますから、どういうロジックで決めたのかを説明しないと、誰も納得できないんですよね。
――厳しい方でしたか。
行徳氏: 厳しかったけれど、フェアな方でした。やったことがないものは、初めからうまくいくはずはない。そういう考え方なので、まずチャレンジしてみろという感じでしたね。
ただし、うまくいかなかったら、ちゃんと反省して、同じことは繰り返さない。2回目は許してくれません。
数字にもすごく厳しくて、こちらから一度出した数字は絶対に忘れない方でした。数字を出したということは、どうやって達成するかを考えたうえで出したはずだ、と。ですから、ゴーン氏を相手に考えずに数字を出すと、致命的な状況になります。
――なぜ、それほど数字にこだわっていたのでしょうか。
行徳氏: グローバルカンパニーは多国籍な組織で、仕事のやり方もさまざまです。でも、人によって捉え方が変わらない共通言語となるのが、数字です。1は1だし、10は10、100は100です。利益率が10%だったら、どこの国でも10%なんですよ。
ただし、その数字をどうやって達成するのかについては、方法はいろいろあります。ですから、彼はそこに細かくこだわらず、CxOや部下に任せていました。私がJERAに入社した当初も、経営メンバーにこの考え方を共有しました。
――ルノーでの仕事はいかがでしたか。
行徳氏: ルノーに入って間もなく、同社に長く在籍していた上司から印象的なアドバイスをもらいました。ルノーのカルチャーとしては、議論すること自体が大きなモチベーションになっているから、議論はしっかりさせなさい。ただし、最後は自分で決めてください、と。そして、一度決めたら譲ってはならないとも言っていました。
決めたことがぶれると、「どうせ後でまた変わる」と思われて、誰も動かなくなってしまう。できるだけスピーディーに判断して、決めたらしっかり守る。その結果に責任を持つ。それが大事なんだと思います。
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サイバー攻撃が高度化する今、もはや一社だけで立ち向かうことはできません。本連載では、第一線で活躍するセキュリティのキーマンの経歴や思考、現場で培った実践知を紹介し、多くの方の判断のヒントとなる視点を届けます。ITmedia エグゼクティブでは、こうした知見を起点に、組織を越えた協力や交流の場づくりも進めていきます。
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