ミドルが経営を変える
【第6回】トップの任免に関与するための実験(1/2 ページ)
「ミドルが経営を変える」バックナンバーはこちらから。
「日本のサラリーマンは、そんなにばかじゃない」――これは、ある大手銀行に勤務する40代前半のビジネスマンの口から出た発言である。今回の連載では、ミドルがトップに「モノ申す」ための究極の手段として、トップの任免の過程にどうやってミドルを参画させるかという仕組みについて述べたい。
冒頭のような発言があったのは、「最近、おたくの景気はどうですか」とビジネスマン数人と挨拶程度の会話をする中で、ミドルがトップの任免にかかわる実効性などについて筆者が話題を投げかけたときであった。
前回の連載では、労働組合あるいはミドルが旗振り役となり、経営者にモノ申し、引導をわたすいくつもの事例を紹介した。そこにあったのは「御用組合」などと揶揄(やゆ)される従順かつ弱々しい姿ではなく、トップを前にしてロアー、そしてミドルが堂々とモノ申す姿であった。
しかし、堂々とモノ申したとはいえ、そのタイミングは遅きに失した感が否めないものでもあった。業績の長期にわたる低迷、社内に漂う停滞感ややる気のなさ、さらには違法な不祥事。これらが引き金となりはじめて、正面切ってモノ申すことを決行したのである。
バブル崩壊後、トップの任免、けん制のあり方については議論百出であった。さまざまな意見が出る中、最も声高に叫ばれたのは「株主主権」を前提として、そのあり方を考えていくべし、との意見であった。中でも、株主の声を経営に取り入れていく手段として社外取締役の役割を重視すべし、との意見は強硬に主張されることが多かった。研究者の世界でいえば、法律学者あるいは経済学者(とくにファイナンスを専門とするもの)の多くはこうした主張を持っていたといえよう。
一方で、社外の人材が果たしうる役割には限界があるのではないか、より効果的な別の手法があるのではないか、との意見も主張されてきた。彼らは、企業経営の現場を歩き回ることが多い経営学者あるいは労働経済を専門とする経済学者であった。経営者の任免、けん制の役割を委ねる先は、企業経営が中長期にわたって健全な形で展開されることを切に願うとともに、それに必要な現場情報を手中にしている従業員、特にミドルが適任ではないか、との意見を彼らは表明してきた。その中には、けん制という手法には避けがたい「遅れ」という限界があることを頭に置いて、実効性を高めるための具体的な制度の設計にまで踏み込んだ主張もあった。
会社経営に社員を参画させる
そうした主張を具体的に見ていこう。現行の法制度を前提とすれば、経営者の任免、けん制にミドルをはじめとする従業員を参画させる手段としては、会社制度上の機関自体に従業員(代表)を含める方法がある。あるいは、経営者を選ぶ過程に何らかの形で従業員の声を反映させる方法もある。
前者の具体的な方法としては、取締役会への従業員代表の参加、あるいは、知日家の研究者として著名なロナルド・ドーア教授(ロンドン大学)が唱えられているように、監査役会に参加させることも一案である*1。
後者の具体的な方法については、伊丹敬之教授(元・一橋大学、現・東京理科大)が相当に詳細な設計案を世に問われている*2。この伊丹試案では、会社のミドルを中心とした「コア従業員」の代表による経営者の参考信任投票の仕組みが提示されている。ここでいうコア従業員とは、「一定レベル以上の管理職と一定年数以上の長期勤続者」にあたる人材である(具体的な基準は、各企業で規定を定めればよいとされている)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
2
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
3
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
4
スキルの向上だけでは成長は望めない――より重要になる「成長マインドセット」とは
-
5
第50回:なぜ「優秀なマネジャー」ほど経営に嫌われるのか
-
6
本田技研工業のDXはボトムアップとトップダウンで“Hondaらしく推進”
-
7
味の素社が挑む“dX”とAI駆動開発――“企画・開発・営業ができる人財”が新規事業を加速する
-
8
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
9
重要文化財の弁財天像 3Dデータ化で確実に継承へ 「将来に残したい」神奈川・江島神社
-
10
PMOのポテンシャルを最大化する~いかにして変革プログラムを成功に導くか~
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー