経営のヒントになる1冊
過去の偉人に学べ――「軍師の生きざま」
本書「短篇小説集 軍師の生きざま」は、群雄割拠の戦国乱世に、知略を持って国の礎を支え、天下にその名を轟かせた策士たちの戦いぶりと矜持を描いた、短篇小説のアンソロジー。いずれ劣らぬ歴史・時代小説の名手による、佳篇ぞろいの一冊である。
編者の末國善己氏は、以下のように指摘している。「戦国乱世は、文字通り弱肉強食の世界。武術の腕や知謀といった卓越した才能があれば、自分を高く売ることも可能だった。フリーエージェント制のスポーツ選手のように、次々と主君を変えることでステップアップし、一国一城の主になった武将もいるのだ。実力次第で立身出世ができる戦国時代は、労働市場が流動化した現代社会と驚くほど似ている」。
本書に登場する武将にも、いくつもの家に仕えて栄達を遂げた人物が何人もいる。例えば、無頼派と呼ばれる作家の一人で、終戦直後に発表した「堕落論」が広く知られる坂口安吾の「梟雄」では、主人公の斎藤道三が主君への裏切りを次々と繰り返しながら立身出世し、ついには美濃国(現在の岐阜県)の一帯を支配する君主にまで至った様子が描かれている。
生き馬の目を抜く時代状況の中、家名を守ってそれをより栄えさせ、同時に自らの出世をも果たしていくというのは、生半なことではない。ときに軍師たちが用いた、非情ともいうべき冷徹な策略をも、作家たちの筆は鋭く剔抉する。そうした生々しさに満ちた作品も、本書に彩りを与えているといえるだろう。
収録作品は計10篇。国枝史郎、大佛次郎と、現在では入手困難となっている戦前の大衆小説が収められているのも、本書の特色の一つだ。
なお、「軍師の生きざま」は、2006年10月に刊行した「短篇小説集 軍師の死にざま」の続編にあたる。「軍師の死にざま」では、権謀術数に明け暮れた軍師たちがその最期をどのように遂げたか、あるいはいかなる死生観を持って日々の生を営んでいたのかという点に注目して、作品を選んでいる。
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