「夢ではない」実現可能性が増す宇宙太陽光発電──宙博の講演と展示から【後編】(1/2 ページ)
前編から続く。
狼氏によれば、SPSS実現に当たっての解決すべき課題は多いが、工学的にまったく不可能であるとかまったく未知であるものは基本的に1つもなく、過去 20年間の技術の進展によって実現性とコスト低減の問題は少しずつ改善されてきている。残された主な課題には、ロケットでシステムを打ち上げるためのコストの低減、太陽電池効率のさらなる向上、高温超電導ケーブルのための冷却システム実現、マイクロ波による送信・制御技術の熟成、宇宙空間でのシステム組み立てやメンテナンスのためのロボット技術の熟成などがある。
このうち太陽電池の変換効率はかなり向上し原理上の限界に近づきつつある。高温超電導の利用については、絶対温度70度程度まで冷却するシステムができれば使えるというデータが中部大学などの研究で出てきており、2010年にはデモンストレーションプラントが動き出すという。マイクロ波送信・制御技術は日本が「きく8号(ETS-VIII)」をはじめとする数々の技術試験衛星で蓄積した技術によって見通しが立ちつつあるという。
最も難しい課題は打ち上げコストの低減。SSPS衛星は 100万キロワット級でおよそ2万トンの質量と見積もられている。日本最大のH-IIBロケットでも静止軌道への投入能力は最大8トンであり、単純計算で 2500回の打ち上げが必要となってしまう。MITでのワークショップにおけるコストの推定資料によれば、現在1キログラムの打ち上げに2万ドルもかかるため初期コストの大部分が打ち上げコストで占められており、これをいかに安く抑えるかが重要な課題。なおこのワークショップでの議論の結果としては「前提条件の分散が大きいためシステムとしてインテグレーションした場合の見通しがつきにくいものの、放棄するのではなくさらに検討を進める潜在的な価値がある」というものだったという。
Copyright© 2011 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「50 TOP PIZZA WORLD 2026」に東京のピッツェリア2軒がランクイン
-
2
沖電気と日立製作所がATM合弁発足 キャッシュレス普及で利用減、効率化狙う
-
3
「価値の安売り」から脱却する「誰に・何を・いくらで」の価格設計
-
4
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
5
Agentic AI時代、企業はいかにリスクをコントロールすべきか――メルカリのAIガバナンスとガードレール実装
-
6
鉄道高架下に「大人の秘密基地」、都心の残された一等地の活用に各社も本腰
-
7
「CISOの役割は、緩める責任を負うこと」-freee CISO 茂岩氏
-
8
第1回:到来した「自律型AI時代」
-
9
第54回:エグゼクティブこそ今観たいSF4選。『攻殻機動隊』『PLUTO』からみるAI時代の「人間の仕事」
-
10
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー