経営者がゼロから分かるコンピュータ(1)
コンピュータと経営の関係について(2/2 ページ)
コンピュータは軍事目的で開発された
そもそもコンピュータは戦時下、弾道計算をするために開発されたもので、最初から企業向けに開発されたものではありません。しかし、世界初のコンピュータ「ENIAC」が世に出たのは奇しくも1946年のこと。終戦を迎え、行き場を企業へと変えたのがITと企業の出会いです。
ちなみに世界初の商用コンピュータ「UNIVAC I」(“UNIVAC I”の最初の仕事は大統領選挙予想でした)が産声を上げたのが1951年。日本に最初の商用コンピュータ(UNIVAC120)が導入されたのは1955年です。日本初のコンピュータは、東京証券取引所と野村證券に導入されました。ここから日本のコンピュータの歴史が始まったのです。最初は、給与計算のような手計算では非常に時間のかかる大量のデータ処理をコンピュータに任せるという使われ方をしていたようです。
経営とコンピュータの関係は?
1960年代から70年代に活躍した最初のコンピュータは、経営情報システム(MIS:Management Information System)と呼ばれ、それまで経験に頼っていた経営に客観的なデータを活用する役割を担いました。その後、1980年までには、さらに経営に深く関わり経営判断をサポートするシステムとして意思決定支援システム(DSS:Decision Support Syetem)と呼ばれ、1980年代以降、私の世代には御馴染みの戦略情報システム(SIS:Strategic Information System)と呼ばれるようになり戦略的にコンピュータを活用するという、現在の企業ITと同様の考え方になっています。この歴史からもお分かりになる通り、コンピュータの世界とITは、ほぼ同意味であると考えてさしつかえありません。コンピュータは当初から経営と深く結びつき発展してきたのです。
ちなみにITという言葉が登場したのは1990年と言われていますが、コンピュータの考え方がITという言葉の出現で変わったわけではありませんし、一貫してITという言葉がゆるぎない定義で使われてきたわけでもありません。実際、森内閣時代のITは、ネットワークインフラに近い意味で使われていましたが、その後、ネットワークのニュアンスが取り込まれたICTという言葉も登場してきました。業界の悪い癖で、言葉の暴走にすぎませんので、あまり言葉じりを気にする必要はありません。言葉のゆらぎでコンピュータ本来の理解ができなくなってしまっては大変不幸な話です。だからこそ、ここではコンピュータという基本的な言葉をあえて使い、本質を理解していこうとしているのです。
経営とITの関係は基本的には何も変わっていない
2007年にはGoogleのCEOであるエリック・シュミット氏が「Don't bet against INTERNET」という記事の寄稿でクラウドコンピューティングという言葉を誕生させたり、Twitterを代表する新たなコミュニケーションの企業活用が話題になったりしています。しかし、企業が経営にコンピュータを活用するという基本的なスタンスは変わっていないと考えるべきであり、インターネット時代になり、経営に活用できるコンピュータ技術の選択肢が増えたと考えるべきでしょう。
これらの言葉についてこのコラムでご紹介していきますので、今は分からなくてもご安心を。今回は、まずコンピュータは最初の導入時から一貫して経営と密接な関係があった、ITという言葉によってコンピュータの考え方が変わったわけではなく、あくまで既存のコンピュータシステムの延長線上に登場した新しい言い方ということを認識していただきたいと思います。このコラムでは、あくまでもコンピュータを中心にお話をしていきます。
次回からは、具体的なキーワードについて、どう経営的な視点で見ていくのかをお話したいと思います。
著者プロフィール:松永 エリック・匡史
野村総合研究所 情報・通信コンサルティング部 上級コンサルタント。Berklee College of Music、青山学院大学院国際政治経済学研究科修士課程修了。ビジネス・コンサルタント。米国通信会社AT&T及びAT&T Solutionsにてコンサルタントとしてのキャリアをスタート。その後グローバル・コンサルティングファームであるアクセンチュアの先端テクノロジーGシニアマネジャーとしてグローバルレベルでのIT最新技術を駆使したコンサルティング及び、メディア&エンターテイメントグループの立ち上げメンバーとして最新ITを駆使したインターネット時代の新たなメディアやエンターテイメント業界の戦略コンサルティング領域を開拓。現在は、野村総合研究所情報・通信コンサルティング部にて、通信・ハイテク事業者向けの戦略コンサルティングをベースに映画、音楽、放送、ゲーム×IT×通信と幅広い分野におけるコンサルティング領域にて活躍する。twitterIDはEricMatsunaga。
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