「いくら俺が口を酸っぱくして言っても動かない部下」のココロ(1/3 ページ)
プライベートでも職場でもコミュニケーションが大切だ。だから繰り返し熱を込めて語ったし、さらに標語を作って壁に張るなどして目につく機会を増やした。でも相手は動いてくれなかった。相手は理解しようとする気があるのだろうか――。そんな経験は、誰にもあるだろう。それもそのはず、伝えようとする側の熱意や努力だけでは、なかなか相手に理解を得られないのが人間の性質だからだ。
伝えることが重要なのではなく、伝わることが重要
理解しない相手が悪い、というわけでもない。
「一斉講義を行って半年後、その講義内容のあらすじを思い出せる人の割合はわずか2%。講義に出てきたキーワードだけでも思い出せるのは29%、残り約70%は、全く記憶に残っていない。そんな研究結果がある」と、東京大学 大学総合教育研究センターの中原淳准教授は言う。
教育学では、教える側が教えられる側に一方的に伝える方法を「導管モデル」と呼ぶ。知識や情報はあたかもモノのように学習者に伝達することができ、それによって学ぶことができる、という考え方である。一斉講義など一般的な授業の体裁はまさにその典型だ。この導管モデルに基づいた教育手法が長年にわたって使われてきたのは言うまでもない。ところが近年、実験などを通じて導管モデルの課題が徐々に明らかになってきた。そこで教育学者たちは、この課題を解決し、学習効果を高めるべく、さまざまな工夫を凝らしている。
ビジネスの現場でも、導管モデルのようなコミュニケーションが一般的だ。経営者が社員を整列させ、壇上で熱を込めてビジョンを語る、上司が部下を机に呼び寄せ指示を与えるとともにその重要性を語る、先輩が後輩に声をかけて仕事の心得を語る、いずれも人数はともかく、形の上でみれば前者が後者に語るのみ、導管モデルとみなすことができるだろう。
「多くの方が“俺だけ熱くて、社員は寒い”“一番学んでほしいことが伝わってない”、そんな感覚に陥った経験があると思う。ビジネスの現場では“伝えること”のニュアンスが一般より欲張りなようで“相手に理解され、行動に移されること”といったところまで含まれている」と中原氏は指摘する。
その背景にあるのは、以下のような論法だ。
- Said=Heard(おいらが言ったことは、聞かれて当然)
- Heard=Understood(聞いてたんだから、理解できて、腹おちして当然)
- Understood=Acted(腹におちてんだから、個人で行動できて当然)
となると、相手の行動に反映されないのは、伝える機会が足りないか、あるいは相手に理解する気がない、という考えに陥っていくだろう。機会が足りないなら繰り返し語ったり目につく機会を増やせば解決できるはずだし、それでも行動に反映されないのであれば、そいつの素質がない、と結論づけてしまう。
ところが伝えられる側の立場に目を転じてみると、以下のようになっている。
- Said≠Heard(あの人、なんか言っているけど、うなづいてるだけ)
- Heard≠Understood(聞こえているけど、わかっちゃいないし、腹落ちしないね)
- Understood≠Acted(わかっちゃいないものは、行動できないよね)
これでは、いくら努力したところで“伝わる”はずもない。もちろん、言いたいだけ言って、結果はどうでもいいというのであれば、このままでも構わない。しかし、重要なのは結果だ。そのためには、理解してもらうことが欠かせない。だとしたら、これまで通りのことを努力を繰り返すのではなく、新たな工夫が必要なのではないか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
レアアースをリサイクル、国内初 三菱電機やダイキンが信越化学と 脱中国の供給網構築へ
-
2
「レッドガス」時代の羅針盤【第三章】従来型グローバルサプライチェーン設計思想からの脱却
-
3
ドコモFG、今秋までに金融AI試験版を開始 投資運用を助言し、若年層取り込み狙う
-
4
第50回:なぜ「優秀なマネジャー」ほど経営に嫌われるのか
-
5
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
6
第11回:世界の潮流は「これからのリーダーはEQの高いリーダー」。日本にも根付くか?
-
7
重要文化財の弁財天像 3Dデータ化で確実に継承へ 「将来に残したい」神奈川・江島神社
-
8
来春卒業する大学生のIT企業人気ランク NTTデータ1位 Skyが急上昇、富士通も
-
9
「その100時間は、何も生み出していない」――認知科学者・堀田創氏が斬るリーダーの"見えない疲れ"
-
10
勇者に最適な武器を! 世界に羽ばたく日本企業を生み出す - Cloudbase 岩佐氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー