チームワーク 2.0
【第5回】リーダーがチームを支配してはならない(2/2 ページ)
チームの編成
チームリーダーは、チームが目標を達成するために必要なことを業務(タスク)に分解し、それを遂行するのにふさわしいメンバーに割り当てます。このことを「ワークデザイン」ということもあります。チームが長期間にわたって大きな仕事をする場合、ワークデザインはとても大変な仕事だと思われるかもしれません。しかし、あまり詳細に業務を分解したり、厳密に役割分担したりする必要はありません。むしろ、完全な分業は、チームを機能不全にすることがあります。例えば、完全に分業されたチームで、メンバーが淡々と流れ作業をやっていることを想像してみましょう。もし、誰かの役割がうまくいかなかったり、仕事ができなくなったりしたら、チームワークはその場で停止してしまいます。
カリフォルニア大学のエドウィン・ハッチンス博士は、大型の軍艦に自ら乗り込み、狭い海峡を通過する際のクルーチームの様子をつぶさに観察しました。船の方位を測る人、時間を記録する人、海図に記録する人など、無事通過するという目的で多くのクルーが分業しています。ここで博士が気づいたことは、巨大の船のあちこちで仕事をしているクルーが、あたかも一人の人間のように状況を認識し、思考し、行動していることでした。しかもその間、クルーはマニュアルに指示されている公式の職務範囲を超えて、ほかのクルーの職務に介入したり、そのときの状況に合わせて役割分担の境界を調整していたのです。
介入に使う労力のため、チームの成果は、確かにメンバーの最大の力の合計よりも少なくなります。しかし、完全分業ではなく、メンバーが「のりしろ」を持つことで、不測の事態にもチームの目標達成を続けることができるように、自然に工夫されたのだと博士は分析しています。
このように、チームの役割分担は、メンバーにも参加してもらいながら進めていくことがよいでしょう。メンバーが自分で決めた役割には、与えられた役割より、より強いモチベーションが働くこともメリットです。リーダーの負担は少なくなるし、チームのリスクは下がる、さらにはモチベーションが上がる・・・一石三鳥ですね。
チームのマネジメント
チームのマネジメントは、チームプロセスのモニタリングと調整、パフォーマンスのモニタリングとフィードバック、およびコーチングの3つに分けられます。前の2つは中期的(年に1回、四半期に1回など)な仕事、コーチングは日々の仕事になるものといえます。
まず、チームプロセスのモニタリングと調整とは、チームのメンバーの役割や個々の業務が、よい状態にあるかをモニタリングし、よい状態になるように調整することです。ここでいうよい状態とは、次のような条件を満たしているかということです。
- チームの目的を達成するために必要な役割と業務分担になっていること
- メンバーが自分の役割を理解し、自分の個人的なゴールに照らして納得していること
- チームのメンバーの成長にとって適切なものであること
次に、リーダーはチームとメンバーのパフォーマンスや目的達成の進捗の度合いを測定し、フィードバックします。この度合は、客観的な尺度と、リーダーが主観的に考える尺度の両面でフィードバックすることがよいでしょう。客観的な尺度は、チームの外の人たちにも理解できるもの、例えば、売り上げ、納期、利益などが典型的ものですが、チームの中だけで定義できるような尺度を使うこともできます。これに加えて、リーダーの主観的な評価を合わせてフィードバックすることにも意味があります。主観的評価がメンバーに受け入れられることで、リーダーのアイデンティティはさらに促進するでしょう。
最後に、リーダーは日々、メンバーをコーチングし、必要なサポートをする仕事があります。すなわち、チームメンバーの仕事ぶりを見て、必要であれば介入し、フィードバックや助言することです。そのためには、リーダーはチームのムードやコミュニケーションの状況などに対して常に感覚を研ぎ澄ませ、それをメンバーにフィードバックして、メンバーが自分で考えることを促します。また、必要なメンバー同士のミーティングをセットし、よりよい情報流通の方法を考えてもらいます。メンバーのスキルと役割とのギャップに対して、スキルアップするためのトレーニングの機会を与えたり、役割の変更をして、適度な成長ができるようにします。
このように、リーダーの仕事はとても重要であると同時に、なかなか大変なものに見えるでしょう。しかし、チームのマネジメントは、リーダーだけの仕事ではありません。この仕事は、メンバーも担うことが重要です。どんなスーパープレイヤーを集めたチームでも、各プレイヤーが監督の指示のみで試合をしてしたら、勝てるわけがありません。メンバー自身がチームマネジメントの一翼を担う「セルフマネジメントチーム」がチームワーク2.0を最強にします。そのためには、チームミーティングの席で、リーダーが担うチームマネジメントを、少しずつ議題として取り上げ、メンバーにもリーダーの視点で考えてもらう機会を積み上げていくことがいいのではないでしょうか。
加えて、チームリーダーは、チームの支配者ではありません。リーダーもメンバーの一員であり、リーダーという仕事は、役割の1つだと考えることもできます。例えば、オーケストラの指揮者は、指揮をするという役割を担ったメンバーであるとみることもできます。もちろんこの役割は、総合的に最も優れた音楽的スキルを持つ人だけができるわけで、オーケストラ(チーム)が目的を達成するために必要なメンバーの選択をも任されています。しかし、メンバーか同じ仲間であり、自分はリーダーとしての役割を担っていると考えれば、メンバーとの距離感も近くなり、気が楽になるのではないでしょうか。
著者プロフィール
北原康富(きたはら やすとみ)
サイボウズ株式会社 シニアフェロー
早稲田大学 招聘研究員・非常勤講師
東京理科大学 非常勤講師
博士(学術)
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