伸びる会社のコミュニケーション
ビジョンはなぜ浸透しないのか? 「気づき」が起こらないからだ。(2/2 ページ)
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
ビジョンは「気づく」もの
なぜそのビジョンを目指すのかという「意図」は、社員に推論させることが必要です。その推論とは、「経営トップがそのような価値観を大切にしているのであれば、そのビジョンを目指すことに納得ができる」という気づきを得させることです。トップがどのようなレンズを通して会社の未来を見ているかに、社員自身が気づくことによって、はじめてビジョンに対する深い理解が可能になります。
ビジョンを理解するということは、トップの価値観のレンズを通した世界観を理解することです。それは、「なるほど、そういうことか」といった感覚です。その気づきが、創造性を引き出すのです。「このビジョンを理解せよ」と上意下達式に押し付けても、その理解が得られることはけっしてありません。「ミドルマネジャーが途中で止めている」という冒頭の経営者の発言は、この点に対する認識を欠いています。
ビジョンが組織に浸透するには、そのための「場」が必要です。その場とは、トップがビジョンに込められた意図を語り、社員がその意図を読み取るための場です。そうした双方向のコミュニケーションの場がなければ、そもそもビジョンの裏側にある価値観は伝わらないのです。
例えば、「豊かな社会づくりに貢献できる会社」をビジョンとする社長と、社員が話す機会があったとします。そこで次のような対話が行われれば、ビジョンの意図はより鮮明に伝わるでしょう。
社員:「豊かな社会づくりに貢献できる会社を社長が目指しているのは、そのような立派な会社にしたいということですか?」
社長:「立派な会社にしたいのはもちろんだが、慈善事業をしたいわけではない。社会に貢献することによって、大きな仕事ができると思うからだ」
社員:「広く社会の役に立てる会社にしようということですか?」
社長:「そのとおりだ。社会に貢献することによってわが社に対する信頼が生まれる。その信頼関係が何より重要だ。世の中の至るところで、わが社に対する信頼関係が創り出されるような会社にしたい」
「信頼関係」を何よりも大切にするというトップの価値観を理解することによって、「豊かな社会づくりに貢献できる会社」を目指すことに納得がいき理解が得られます。それによって、トップの価値観のレンズが社員にも共有されるようになるのです。
フォロワーシップの低下はコミュニケーションの問題
ただし、このようなコミュニケーションが可能になるためには、2つの条件があります。1つ目は、ビジョンがトップの価値観に基づいて描かれているということです。さもなければ、ビジョンに込められた意図を、トップが思いを込めて語ることはできません。経営企画のスタッフに命じて作らせただけのビジョンでは、表面的な情報を伝えることしかできなくなってしまいます。
2つ目の条件は、ビジョンを受け取る社員の側に、トップの価値観を理解するための意志と推論力があることです。これは「フォロワーシップ」(部下力)の土台になります。トップがビジョンや戦略を示したとき、そこに込められているトップの思いを理解しようと努めることは部下として当然のことです。けれども、そうしたフォロワーシップが希薄になっていると指摘する声も少なくありません。
フォロワーシップが薄れている原因の1つには、昨今の社内コミュニケーションが情報偏重になっていることがあるのではないでしょうか。事実と因果関係と成果といった情報だけで完結するコミュニケーションには、人の価値観や思いが入り込む隙間がありません。そのようなコミュニケーションを繰り返しているうちに、価値観を理解する感度も低下してしまいます。
つまり、フォロワーシップの欠如というのは、部下個々人の問題というよりも組織のコミュニケーションの問題なのです。「ビジョンが浸透しない」と嘆く経営者は、そのことを部下の責任にすることはできません。社内コミュニケーションのあり方は、最終的にはトップの姿勢にかかっているからです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
伸びる会社のコミュニケーション
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
第53回:なぜ、日本企業では「考えるマネジャー」が育たないのか──AI時代、「言われたことは得意だが、課題抽出や提案は苦手」な組織から脱する方法
-
2
新顔相次ぐ小型電動モビリティー 優れた環境性能、免許返納した高齢者の「次の足」に注目
-
3
2026年版「世界のストリートフード都市ランキング」発表、1位はホーチミン
-
4
「AIが勝手にやりました」は通らない トラブルの瞬間に試される責任の所在
-
5
酷暑で広がる街中の涼 濡れないミストや特殊素材の日傘
-
6
第1回:社長になる人が、課長時代から共通してやっていること
-
7
DX・AXプロジェクトの成功に必要な条件とは - コスモエネルギーHD ルゾンカ氏
-
8
画面の中だけで満足してない? AIが「現実世界(フィジカル)」を動かし始めた衝撃
-
9
世界のトップ層は何を議論している? 第一線の論客から見えた「やらかしの正体」
-
10
「その100時間は、何も生み出していない」――認知科学者・堀田創氏が斬るリーダーの"見えない疲れ"
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー