ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
「経営の役割分担と相互けん制」で、会社経営の安定と成長が両立できる(2/2 ページ)
CEOは、理念を唱えるドン・キホーテ
「CEO」は、基本的にはその企業を起業した当人(創業者)が就く立場です。上記表の4つの仕事の中で(1)経営理念の作成、なかでもミッションを作成する役割は、この人にしかできません。そもそも起業は創業者の情熱や信念がなければなし得ないものです。
その意味で、創業者(CEO)とは「理念を唱えるドン・キホーテ」。自らの理念(ミッション)と、その実現手段としての自分の会社を、理屈抜きに強烈に信じていて、その理念の達成に向かって脇目も振らずに猛進していきます。そればかりか周囲にも同じ理念を信じさせ、自分についてこさせる、そんなエネルギーを持っているのがCEOです。CEOは企業の顔であり、(4)渉外活動を通じてビジネスチャンスを広げていくべき立場でもあります。
COOは、オペレーションを率いる番頭
CEOが理念を唱えているだけで事業が成り立ち、自動的に企業が成長していくわけではもちろんありません。理念は実務に落として実行されなければなりませんが、そのオペレーションを担うのが「COO」です。
いうなれば、COOは「オペレーションを率いる番頭」、(2)実務のPDCAを回す立場です。CEOが理想を見ているとすれば、COOは現実を見ています。理想と現実を1人の人間の中にあわせ持とうとすると、自家中毒を起こしがちです。どちらかを諦めるか、なんとか妥協点を見つけるか、両者とも追求しようとして空中分解してしまうか……。やはり理想と現実は分けて別々の人間の中に持たせた方が合理的といえます。
CFOは、経営管理担当の参謀
「CFO」は、CEOやCOOのように事業を推進していく立場ではなく、管理サイドに身を置いて、事業を客観的に俯瞰する立場です。「経営管理担当の参謀」というイメージでしょうか。主として「カネ」に関する部分、PLCFマネジメントやファイナンスを見る立場ですが、「ヒト」に関する部分、HRMや採用、組織設計など組織管理全体を含む(3)リソースの調達と配分の全社的戦略を整えていく立場です。
経営には「役割分担」「相互けん制」が必要
経営者が自ら4つの仕事をこなしていくのは難しいため、CEO・COO・CFOによる3人経営体制はとても効率的なシステムだといえます。3人の経営体制は、1人ではこなせない経営の仕事を「役割分担」して行えるという利点以上に、重要と考えるのは「相互けん制」です。
経営チームがあっても、この3人がそろってない会社というのは結構あります。例えばCOOがいないケース。CEOとCFOだけだと、組織マネジメントはCEOがやるケースが多くなりますが、CEOは理念を唱えるドン・キホーテらしく夢見がちで、組織が現実遊離したり、経営と組織が乖離(かいり)したりします。また、CEOはキャラクターが強く、圧が強かったりするので、組織が疲弊してしまう可能性もあります。
一方、経営の相棒であるCFOは、カネ系、つまり数字に強い人です。しかも、管理サイドであることから、事業の数値にツッコミを入れる立場であり、じゃあ事業をどうするかということに専門性もなければ、責任がある訳ではありません。つまり、事業サイドにうまく血を通わせることができません。このように、COOがいない結果、組織が大変になり、いつまでも会社が安定しないということが考えられます。
CFOがいなくてCEO、COOだけの会社も同様です。CFOがいない会社は、CEOのビジョンを語る力とCOOの組織を動かす力を持つので、攻めには強くなります。しかし、CFOの冷静で客観的な事業管理力を欠くので、守りが弱いといえるでしょう。イケイケだった会社が、思わぬ暗礁に乗り上げて、あっさり折れてしまった例はいくつでもあげられます。
経営チームに3人がそろっていたとしても、CEOの独裁体制だと(ベンチャーやオーナー会社にこのタイプは多くいます)、理想を追うばかりで現実の数字や人を見られない、進捗管理で組織にプレッシャーをかけるだけに陥りがちです。逆にCFOが強すぎると(上場会社はこの傾向があります)、企業が守りの態勢に入ってしまい、事業推進力が弱まってしまいかねません。
3人の業務の住み分けが合理的にできており、権力や能力が拮抗していて、相互チェック機能も健全に働いている状態、つまり三権分立ができている状態が理想的な経営体制といえるでしょう。
著者プロフィール:高森厚太郎(たかもり こうたろう)
一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。
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