ドラッカーが教える成果をあげる人の8つの習慣

第4の習慣 意思決定を行う(1/2 ページ)

意思決定はあらゆるレベルで行われている

 今回のテーマは、成果をあげる人の第4の習慣 「意思決定を行う」だ。

 私たちは、正解が用意された問題を解くという形態の学習を経験してきた。その経験からか、全ての物事には一つの正解があると思い込んでしまう。正解があるのは問題集だけだ。実際、仕事は日々正解のない問題に直面する。まさに仕事は判断の繰り返しであり、決断の連続だ。正解がないから考えを決めなければならない。考えを決めることを意思決定という。意思決定はトップが行うものであって、管理職や一般社員には関係ないと考える人もいる。本当にそうなのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

意思決定とはトップが行うものであり、トップが行う意思決定だけが重要であるかのごとき議論がある。大きな間違いである。組織としての意思決定はスペシャリストから現場の経営管理者まであらゆるレベルで行われている。

ピーター・ドラッカー

 意思決定はあらゆるレベルで行われている。今日何をどう決定したかによって明日の成果が決まる。従って、成果をあげるべく働いている全てのビジネスマンにとって、意思決定は極めて重要なのだ。

4つのことを決める

ピーター・ドラッカー氏

 ある企業でこんなことがあった。その企業は急速に成長したIT系の企業で9つの事業部で組織が構成されていた。マーケティングに強い事業部、システムに強い事業部、大型案件に向いている事業部、大手企業に向いている事業部、中小零細企業に向いている事業部と、いつしか事業部それぞれの特徴をもつようになっていた。

 ある日、大きな案件が舞い込んできた。経営チームはその案件をどこの事業部に任せるべきか話し合った。大型案件に向いている事業部に決まった。早速、事業部の責任者が呼び出され、彼はその決定を知った。

 そして、自分の事業部に戻り、実行の責任者となる部下にその案件の全容を伝えた。すると、部下から思いも寄らない声が返ってきた。「スケジュールはびっしり詰まっています。そんな大きな仕事に対応することはできません」部下は口には出さなかったが、上の無謀な決定に腹を立てた。また、事前確認もしないで、その決定を安易に受け入れた事業部長に対しては、さらに腹を立てていた。

 事業部長は部下の話を聞くと部下の主張が事実であることを理解した。一度、経営チームで意思決定されたことは宙に浮いてしまった。その大型案件は行き場がないまま、経営チームのところに戻った。その時の経営チームが行った意思決定は、意思決定とはいえなかった。意思決定がちゃんとした意思決定になるために、何を決める必要があるのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

意思決定が意思決定たるためには、次の4つのことを決める必要がある

(1)実行の責任者

(2)日程

(3)影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、理解し、納得すべき人

(4)影響を受けなくとも決定の内容を知らされるべき人

組織で行われている意思決定のうちあまりに多くが、これらのことを決めていなかったために失敗している。

ピーター・ドラッカー

 意思決定とは、上記4つを決めなければ、意思決定とはならない。前記の事例に登場した事業部長は私だ。私はこの時、ドラッカーの言っていることを身をもって痛感した。

意見の不一致が重要

 意思決定しようとすると、相反する意見の衝突が起こることがある。異なる視点の対話がかみ合わないこともある。異なる判断基準に戸惑いが起こる。そう簡単に意見は一致しない。意見の衝突を避けたいのは当然だ。考えを否定し合うのは気持ちのいいものではないからだ。意見の食い違いは時として、人格否定をし合うかのような誤解に発展してしまうこともある。では、成果をあげる意思決定を行うために、どうすればいいのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

成果をあげる意思決定は、相反する意見の衝突、異なる視点との対話、異なる判断の間の選択があって初めて、よく行いうる。従って、決定において最も重要なことは「意見の不一致が存在しないときには、決定を行うべきではない」ということである。

ピーター・ドラッカー

 成果をあげる意思決定を行うためには、正面衝突を避けてはいけない。いろいろな角度から考え、異なる意見を戦わせることによってはじめてより良い決定ができるからだ。もちろん不毛な争いは不要だ。しかし価値ある対立は必要である。

ある企業の成果をあげた意思決定

 ある企業でこんなことがあった。経営チームの1人がアメリカに進出することを提案した。意見は積極派と消極派の2つに分かれた。積極派の主張はこうだった。「既に経済はグローバル化している。海外展開をするかどうかという議論の余地はない。遅すぎたくらいだ。すぐにでも進めるべきだ」

 反対派の主張はこうだった。「市場も違う。国も違う。日本で売れているからといってアメリカで売れるとは限らない。それに日本の市場もフォローできていない。アメリカに拠点をつくる前に国内拠点を増やすべきだ」

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この記事の著者

山下淳一郎
山下淳一郎

トップマネジメント株式会社 代表取締役 ドラッカー専門のコンサルタント。コンサルティングファーム出身、上場企業役員を経て、トップマネジメント株式会社を設立。上場企業を始めとして、IT企業の経営チームにドラッカーの理論を活用するコンサルティングを提供している。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学の経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。著書『ドラッカーに学ぶお客様を幸せにする会社の作り方』(角川フォレスタ)、寄稿に『人材育成の教科書』(ダイヤモンド社)、『企業と人材』、『経済界』、『人事マネジメント』等。

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