「夢がなかった」から成功できた起業家からのアドバイス

「好きなことを仕事にしたい」と願う人が陥りがちな3つの思考(1/2 ページ)

自分の好きにこだわりすぎている

「やりたいこと、全部やりたい。」(Amazon)

 「好きなことを仕事にする」という言葉を聞くと、小さいころからの「夢」や「長く続いている趣味的なこと」を仕事にすると考える人が少なくないでしょう。しかし、現状の仕事がそれらに結びついている人は少ない。「自分にはできない」とか「今の仕事とは関係ないから無理」となって仕事と「好きなこと」を切り分けて考えている人が多いように感じます。

 もちろん、「夢」などをかなえるために努力することは素晴らしいことですし、実際に行動に移せるのなら、移した方がいいと思います。ですが、実現に向けて実際に行動に移せないのであれば、そういった昔からの「夢」や長年の趣味となっている「好きなこと」にとらわれないほうが「好きなことを仕事にする」には必要ではないでしょうか。当たり前ですが、行動を起こさない限り、実現しないからです。

 私はよく、まわりの人たちから「好きなことを仕事にしていいですね!」といわれます。自分でアクセサリーメーカーを立ち上げ、インドの郊外にある小さな村に、小さいながらも自社工場を作って、伝統工芸技術を利用したオリジナルブランドで作っている。プロフィールの字面だけを見ると、そのような印象を持つかもしれません。

 確かに、ファッションには昔から興味があり、今の仕事もとても楽しんで取り組んでいます。しかし、それが自分の「好きなこと」なのか、「夢だったのか」というと自分でも首をかしげてうなってしまうところがあるのです。

 もちろんファッションのトレンドなどはチェックしますが、毎日欠かさずファッション誌やWebサイトなどを読んでいるわけでもなければ、服やアクセサリーをたくさん持っているわけでもなく、「むしろ少ないほうじゃないかな?」と思います。つまり、それほど熱烈に好きなことを仕事にしたわけではなく、実家がパンスト店だったことで、自分が商売をはじめるときにも、自然と雑貨や小物やアクセサリーが選択肢に入ってきたという感じでした。そうして実際に仕事をやっていくうちに、「これやりたいな」「あれもやってみたいな」と楽しんできた。ただ、それだけなのです。

 昔から抱いている「好き」ではなく、「今やっていることを好きになる」ことに全力を傾けたほうが、人生は楽しくなると考えています。「まったく無理!」という感覚でさえなければ、まずは身の回りでできることをなんでもやってみて、どんどんできることを作って、「できる仕事」を好きになっていったほうが「好きなことを仕事」にできる可能性は高いのではないでしょうか。

小さな「好き」を育てていく

 そんなこと言っても、「今の仕事を好きになんてなれない」と感じている人もいるかもしれません。

 私は大学時代、「まったく向いていないな」と感じたアルバイトをしたことがあります。それは輸入会社の事務の仕事でしたが、簿記の資格を持っていたにもかかわらず、帳簿をつけるのが本当に苦手だったのです。あまりにミスばかりするので、情けないことに「立花には帳簿を触らせるな」とお達しが出てしまったほどでした。そのため職場でやることがなくなってしまい、仕方なくまわりにごちゃごちゃと散らかった、誰もやらない段ボール箱の整理をしていました。

 でも、これがやってみると意外と大変……。大変だからこそ、みんなが放ったらかしにしていたわけです。「でもこれくらいはやろう」と毎日頑張って続けていると、ある日社長がそれを見て、「素晴らしい!」とほめてくれたのです。そして、その日までは会社でダメなアルバイト扱いでしたが、急に「いてくれて重宝な人」になれたのでした。

 そのとき私は、「向いていない仕事場にも1つくらい好きになれることがあるんだな」と気付きました。

 また、そんな小さな「好き」を見つけられたことで、みんなに喜ばれ、ほかの仕事も任されるようになり、最後は惜しまれて辞めるまでになれました(結局、帳簿の仕事は最後までまわってきませんでしたが)。どんなときでも「好き」を見つけられる力がつくと、どこでも幸せに生きていくことができます。

 もう1つ「仕事を好きになる」ためのアドバイスをするならば、家族や周りの人たちに、仕事の話をたくさんしてみてください。子どもでもいいと思います。愚痴をいうのではなく、「今日こんなことがあって面白かったよ!」と話せば、家族はうれしくなりますよね?すると会話も自然と弾むし、「また面白い話を仕入れておこう」「帰ったらこれを話してあげよう」と思えて、嫌だった仕事のなかにも少しだけ楽しみが増えていくはずです。

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この記事の著者

立花佳代
立花佳代

エシカルアクセサリーメーカー、株式会社スプリング代表取締役 1966年、神戸三宮高架下商店街で小売店を営む両親の長女として生まれる。大学卒業後、渡英。23歳で結婚し、一女をもうけるも、就労意欲の乏しい夫に嫌気がさし、27歳で離婚。貯金0の状態から、コツコツとお金をためて、株式会社スプリングを設立。インドの伝統工芸品の美しさに心を奪われ、「インドの小さな村の伝統工芸技術を使った、オンリーワンのアクセサリーブランドをつくりたい」という思いから、2008年、インドの小さな村でのオリジナルアクセサリー開発に着手。約5年の苦労の末、2013年「MAYGLOBE by Tribaluxe」(メイグローブ バイ トライバラクス)を立ち上げ、話題となる。それまで産業のなかった村に産業を与え、女性たちの自立をうながすことにつながったことで、近年は、いちはやくSDGsに取り組んできた企業、エシカルなアクセサリーメーカーとして注目されている。

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