デジタル変革の旗手たち
テクノロジーとお客さまの理解が進めば、出来ること、可能性もより広がっていく――J.フロントリテイリング 野村泰一氏(2/2 ページ)
店舗で催事を開催する場合、顧客に催事会場まで足を運んでもらう必要があり、それが商機を逃すことにもつながってしまう。顧客がアバターロボットを自宅から操作できれば、出掛けることなく催事会場の商品を自由に見ることができるし、東京の店舗と大阪の店舗で催事を開催しているときに、大阪にしかない商品を東京の店舗に来店した顧客に見てもらうことも可能だ。それぞれの店舗や催事場にいるスタッフが接客し、商品の説明を行えるため、いわゆる「バーチャルショールーム」とは違った体験が提供できるのが大きな特徴だ。
ネット越しに接客することもできるため、必ずしもスタッフが店舗にいる必要はない。通勤時間の削減やリモートワークの実現など、働き方改革も推進できる。言語の制約や営業時間の制約を受けることもなくなるといった利点も考えられる。
「店舗や催事における接客対応には、さまざまな課題がありますが、アバターロボットがあればこれまでとは違ったアプローチが可能になるのではないかと考え、JFR本社主導で進めてきました。店舗の課題に本社が向き合うのは異例ですが、検証の様子は人財育成プログラムも含めて社内ポータルで発信することで、1つの店舗の成果を全社で共有することができ、将来的には会社全体に広がっていくことが期待できます」(野村氏)
アバターロボットだから分かる情報を可視化して面白い価値を提供
アバターロボットの実証実験では、いくつかの課題も見えてきた。例えば、商品の色合いや質感などを伝えるのは限界があることから、店員とのコミュニケーションでそれを補うことが成り立つのか、また技術的には、PCのスペックやネットワークスピードの問題、専用アプリをインストールするなどの課題があり、これらも解決する必要がある。
野村氏は、「今回は、どんな時にトラブルが発生するのかを注意して見たり、アバターがどれくらいの段差なら移動できるかの実験も行い、検証結果に基づいてマニュアルを作りました。アバターロボットの活用には、さまざまなデザインがあると思っています。将来的には走行情報やお客さまの目線情報などを利用することで、買わなかったけどすごく見ていたとか、ヒートマップから導線を分析するなど、アバターロボットだから分かる情報を可視化できれば新たな価値を提供できると考えています」と話す。
もちろん今回の実証実験でも多くの効果が確認できた。店舗スタッフがヘッドセットをつけ、顧客がアクセスしているアバターロボットに対して接客対応することで、JFRの強みである「接客力」を生かしながら、距離を越えることができ、店舗や催事イベントにおいて、これまではアクセスできなかった顧客にも買い物の体験を提供することができた。
「店舗スタッフは、ヘッドセットをつけてアバターロボットとBluetoothでつながっているので距離にかかわらずお客さまと会話できるのですが、面白かったのは、アバターロボットに話し掛け始めるというシーンがあったことです。しかも顔を近づけて、ひそひそ話をしていました。ロボットに感情移入して、自然と人と同じ接客対応になっていきました」(野村氏)
来店した顧客への接客と同様、一人ひとりに寄り添う「アバター接客」とも呼べる新しい考え方が生まれ、会社の文化を変えていくことも期待できそうだ。この取り組みは、単に課題を解決しようとするワークショップではなく、有形無形の資産を生かし、新たなアイデアを生み出すワークショップのひとつの在り方だという。
野村氏は、「テクノロジーによる無人化を実現するにはもうしばらく時間がかかりますが、今ある人財の強みを生かしながら、今あるテクノロジーを活用することで、新たな価値を生み出していくことが、われわれの定義しているデジタルデザイナーの役割だと思っています。単に絵を描いているだけだと信用してもらえませんが、実際に動くものを見せれば考え方も変化します。難しい決裁文書を書く前に、検証結果を見てもらうこと。そして、現場と一緒に成果を広げていくプロセスがすごく大事だと感じています」と話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
デジタル変革の旗手たち
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
2
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
3
高島屋・村田善郎社長 挑戦続けるアバンギャルドな百貨店 ベトナムや新型SCに重点投資 My Vision
-
4
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
5
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
6
味の素社が挑む“dX”とAI駆動開発――“企画・開発・営業ができる人財”が新規事業を加速する
-
7
森ビルが挑む、DXを通じた「ヒルズライフ」の充実とコア領域の内製化
-
8
どの区立中からも通えるオンライン将棋部発足 休日はリアル、プロ級も指導 東京都大田区
-
9
第52回:「管理」する時代は終わった──AI時代、マネジャーに残された本当の仕事とは?
-
10
本田技研工業のDXはボトムアップとトップダウンで“Hondaらしく推進”
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー