セキュリティリーダーの視座
子供の夢をYouTuberからホワイトハッカーに! 具現化を進めるCISO - GMO 牧田氏(4/4 ページ)
社会としてホワイトハッカーの育成が急務、AIで極力自動化を
――企業の枠を超えた取り組みは何かしていますか。
牧田氏: 私たちとしては、多くの企業をどう守るかに思いを巡らせています。課題は、私たちが直接カバーできない企業をどうフォローするかです。
すでに中小企業は、先ほどのGMOインターネットグループの自動診断で当事者意識を醸成してもらう環境を整えています。
そして、中堅企業については、新たに、三菱UFJ銀行とGMOインターネットグループ、GMOサイバーセキュリティ byイエラエで2026年1月にジョイントベンチャーを作りました。三菱UFJ銀行の顧客基盤を活用すれば、地方の企業もフォローできるのではないかと考えています。日本全体をカバーするために奮闘中です。
また、民間企業だけではやはり弱いところがあります。サイバー攻撃には、経済安全保障を揺るがしかねないものもありますから、官と一緒にやっていかないといけない領域もあります。現状でも防衛省や警察庁などとの協力はありますが、今後はもっと力を入れていきたいです。
――日本全体としてセキュリティ人材不足と言われていますが、牧田さんの肌感覚を教えてください。
牧田氏: 日本全体はもちろん、世界全体でも足りていないですね。取り組むべき課題は2つあって、一つはトップ層、すなわちホワイトハッカー級の人材の育成です。もう一つは、そのノウハウを詰め込んだAIエージェントの開発です。
今後、会社を守るうえで大事なのは、攻撃側の手法や考えを理解して対策を打てる人材だと思います。単純な運用のオペレーションはAIに任せていくことになるでしょう。人材が足りないので、普通のことはAI、普通じゃないことはトップガンがやる、という形になっていくと思います。
それでも人材不足は解消されないでしょうから、優秀な人材のノウハウをAIエージェントに移植し、自動化の範囲を広げていくことがポイントになるでしょう。
子供の夢がYouTuberからセキュリティエンジニアに変わる世界を作る
――今後について、牧田さん個人として目指している世界観を教えてください。
牧田氏: 軸は「人を助ける」で変わりません。その上で、日本のエコシステムを変えたいと思っています。ホワイトハッカーがかっこよくて、億万長者になれる職業になったら、子供たちが憧れる職業になると思うんです。
今は小学生が「YouTuberになりたい」って言うじゃないですか。それが「セキュリティエンジニアになりたい」とか「ホワイトハッカーになりたい」に変わっていくような世界を作りたい。
――そのエコシステムについて具体的なイメージはありますか。
牧田氏: 実は、イスラエルではセキュリティエンジニアが人気の職業なんです。イスラエル国防軍に8200部隊という情報機関があり、そこで鍛えられた人がセキュリティのスタートアップに流れていきます。イスラエル政府の支援もあり、成功例がたくさん生まれて次の世代の憧れになっています。
そうすると「8200部隊にいた」がブランドにもなり、入りたい人が増える。とても良い循環ができています。
――日本でその循環を作るために重要な要素は何でしょう。
牧田氏: やりがいだけじゃなくて、報酬面も含めて夢のあるものになると、優秀な人が集まり、次の挑戦が生まれます。ですから、報酬設計も含めて考えています。
具体的には、1億円を目指せる給与体系を作りたいです。恒常的には難しくても、短期間であれば、1億円の報酬を得るのも夢ではないのではないかと思っています。例えば、自分が出した利益の1割がもらえるような仕組みができれば、10億円の利益を出して1億円の報酬をもらうことも可能ではないかと。とにかく夢がある体系にしたいですね。
「楽しむ」と「巨悪に立ち向かう」
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
牧田氏: 2つあります。
1つは、セキュリティを楽しむこと。技術として突き詰めると本当に面白いし、感動します。
もう1つは、犯罪者グループが巨大化して、儲けてしまっている現実に対して、みんなで力を合わせて立ち向かうこと。セキュリティに予算を割けない弱い組織が被害者になる構造は良くないので、一緒に戦っていきたいです。
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サイバー攻撃が高度化する今、もはや一社だけで立ち向かうことはできません。本連載では、第一線で活躍するセキュリティのキーマンの経歴や思考、現場で培った実践知を紹介し、多くの方の判断のヒントとなる視点を届けます。ITmedia エグゼクティブでは、こうした知見を起点に、組織を越えた協力や交流の場づくりも進めていきます。
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